「3億円タワマン」の下に経営難に陥る創業130年の下駄屋がある街「月島」 新住民と旧住民の間にある"大きな経済格差"によって見えた深い分断

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うちも私の代で終わりにするつもりですよ。続けられるなら続けたいけど、道具を作る業者さんが軒並み廃業してるから、続けたくても続けられないってのが本当なんですよ」

ただ、そんな話を聞いている最中にも、お客さんはひっきりなしに入ってくる。レトロブームで日本古来の履物の需要も伸びているのかもしれない。

現在、月島には屋上にヘリポートのあるタワマン(高さ100メートルを超えるものにはヘリポート設置が義務)が5棟確認できる。これからも増えていくらしい。遠くから見ると、モダンで新しい街だが、近づいて地元の方々の話を聞くと、明治、大正、昭和の歴史を感じることができる。

タワマン群
月島駅近くのタワマン群を足元から見上げた(筆者撮影)

前出の楠さんは街の歴史をこんなふうに説明してくれた。

「西仲通り商店街はね、土地柄的にも人が集まりやすい場所にあるんです。築島した当時は東京の離島みたいな場所だった。私が小学校の頃まで、この商店街の隅っこに”月島の渡し”があって、そこから渡し船が出ていたんです。それを利用する人がこの商店街を行き来していた。当時はあの頃は夕方になると、お祭りの露天みたいに通り全体が賑やかだったね」

「中央区で100年越えの本屋は丸善、教文館、それとうちだけ」

西仲通り商店街で100年を超える店は「あづまや履物店」だけではない。街の本屋も健在だ。商店街を歩いていて、思わず足を止めたのが、「相田書店(中央区月島3-5-4)」だ。今では本当に珍しくなった街の本屋である。

相田書店
相田書店(筆者撮影)

最近は本をAmazonで購入することも増えたが、職業がら書店は頻繁に利用する。とはいえ、生活圏から書店がどんどん姿を消している。相田書店は、通りに面した店の間口は2間(約4メートル)ほどだ。店先の棚には売れ筋の雑誌が並べられ、その隣には絵本がささった、クルクル回るブックラックが置かれている。

扉を開けて中に入る。ぐるりと見渡せるほどの店内に、単行本、文庫本、地図、雑誌、コミック本などが所せましと並んでいる。かつてはこうした書店がどこにでもあった。月曜日の朝には開店前から店先に陣取って、『週刊少年ジャンプ』を買っていた子どものころを懐かしく思い出す。

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