トヨタが目指す「究極の安全車」の現在地 自動運転プロジェクトのキーマンに聞く

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0.1%のリスクがあるなら、99.9%の安全・利便性はあきらめるという選択肢もあるでしょうし、インフラや新たな交通ルールによってリスクをもっと減らして受け入れるという考え方もあるかも知れません。大変難しい議論ですが、はじめから「できない」と決めるのではなく、チャレンジしていきたいと思います。なにかひとつブレークスルーすれば、一気にその方向に進んでいく可能性がありますから。

すべての人に、安全でスムースな移動手段を提供したい

清水:アリの一穴ですね。ところで、グーグルのようなIT企業は何を考えているのでしょうか?

鯉渕:他の企業がどういう思いでこの技術に取り組んでいるかはよくわかりません。ただ、この技術は「単に車が自動で走る」「さらに安全になる」といった側面だけでなく、地図の自動生成等を可能にする超高機能プローブ、そしてクルマのさらなる知能化への足掛かりといった意味を持っており、そこにさまざまな可能性を感じているのではないでしょうか。

清水:クルマがセンサーを持つという意味はビッグデータの価値をどう社会に生かすのか?とてつもない大きな宝の箱を開けたような気がします。さて、走るのが好きな豊田章男社長はどのように考えているのでしょうか?

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実験車には「Mobility Teammate Concept」のロゴ

鯉渕:(豊田章男)社長には「ニュルで俺に勝てたら、認めてやる」といわれています(笑)。まじめな話をすると、この技術ですべての人に安全でスムースな移動の手段を提供したいと考えています。運転を楽しみたいときに、思い切り楽しむことができるというのははずせませんが、運転できないとき、運転したくないときは信頼して任せることができるようにしたい。

そしてそのベースとなるのが、『Mobility Teammate Concept』。人とクルマが同じ目的で、ある時は見守り、ある時は助け合う、気持ちが通った仲間のような関係を築くトヨタ独自の自動運転の考え方です。

編集部註:ニュルとは「ニュルブルクリンク」と総称されるドイツ北西部にある過酷なコースで有名なサーキットのこと。世界の自動車メーカーが高性能スポーツモデルのラップタイムを競い合うなど、「スポーツカー開発の聖地」などと呼ばれることもある。

清水:自動運転を突き詰めるということは、人(ドライバー)が、どう判断し、どう行動しているかを、詳細に知ることが重要と。

鯉渕:そのとおりですね。

清水:ありがとうございました。

清水 和夫 国際自動車ジャーナリスト

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しみず かずお / Kazuo Shimizu

1954年 東京生まれ 武蔵工業大学電子通信工学課卒業。1972年のラリーデビュー以来、プロドライバーとして、国内外の耐久レースで活躍する一方、モータージャーナリストとして活躍を始める。自動車の運動理論や安全性能を専門とするが、環境問題、都市交通問題についても精通している。日本放送出版協会『クルマ安全学のすすめ』『ITSの思想』『燃料電池とは何か』 ダイヤモンド社『ディーゼルこそが地球を救う』など多数。日本自動車ジャーリナスト協会 日本交通医学研究会 会員。日本科学技術ジャーナリスト会議 会員(JASTJ)。

http://www.startyourengines.net/

https://www.facebook.com/kazuoshimizuofficial/

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