国の電波規制でE-2CのECMにそのような問題があるならば、同様に空自の1機550億円以上するAWACS(空中早期警戒管制機)、E-767、F-15戦闘機、そして空自が近く導入予定のE-2D(E-2Cの次世代機)、そしてF-35A戦闘機もECM機能に問題があると疑うべきだろう。
つまり空自のECM能力は極めて疑わしく、使えもしない機能の獲得にために極めて莫大な税金が使用されてきたことになる。空自だけではなく、陸自や海自の装備のECM機能についても疑ったほうがいい。
しかも防衛省は次世代の早期警戒機開発を企画している。これには海自のP-1哨戒機の機体を使用することが想定され、そのための性能検討等に必要な、警戒監視レーダー搭載形態の機体空力データ等の調査をおこなっている。だが過剰な電波規制の下でまともな早期警戒機を開発できるのだろうか。
ネットワーク化は中国のほうが進んでいる
昨今の軍隊ではネットワーク化が進み、例えば戦闘機による対地支援にしても、砲兵に対する射撃の要請にしても、音声無線ではなく、データ通信やビデオ画像などで行われる。現在自衛隊、特に陸自はこのような機能がほとんどない。自衛隊はこの分野では先進国や中進国より遅れているのに、問題が顕在化していない。UAVを使った情報収集、ネットワーク化では中国やパキスタンからも遅れている。
最近はこの状態の改善を進めてはいるが、電波規制をそのままに放置しては、まともなネットワークの構築はできない。にも関わらず、膨大な予算がネットワーク化につぎ込まれている。
これは、この連載で繰り返し指弾している衛生軽視と同根だ。実戦を想定していないから、このようなことになる。この現実を直視せずに、「軍隊と同じだろう」という根拠のないお思い込みで安保法制を改正したのは政治の無知は罪深い。
10月2日号の週刊朝日には、「容量が足りない自衛隊の通信網 総額1400億円最新装備に対応できず」という記事が掲載された。
この記事は自衛隊の通信ネットワークのお粗末さ指摘している。同記事では「グローバルホークが敵機を察知したり、画像や映像を送ったりするためには最大274Mbps(メガビット毎秒)の通信容量が必要です。ところが、いま自衛隊が全国に張り巡らせているマイクロ波の回線は、札幌~市谷(東京)間で104Mbps、市谷~健軍[(けんぐん)熊本]で208Mbpsしかない。グローバルホーク1機分だけでマイクロ回線の容量は満杯状態。せっかく得た敵機の姿すら満足に防衛省に送れないことになりかねない」と防衛省関係者のコメントを紹介している。
つまり、何百億円もかけてグローバルホークを導入してもまともに運用できない。その能力の数分の一しか利用できない。E-2Cと同じ構図である。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら