新型プリウスは「燃費40キロ」だけじゃない 海外普及に向け、トヨタは何を訴求したのか

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「グローバルで見るとまだまだHVは普及できていない。HVの良さをグローバルで広めていきたい」(プリウスのチーフエンジニアの製品企画本部・豊島浩二氏)。

HVは、日本国内でこそ市場全体の2割弱(軽自動車を除くと36%)を占めるが、全世界では2%台とマイナーな存在だ。HVは減速時の回生エネルギーから作り出した電気で、モーターを駆動させてエンジンを補う。市街地走行が中心で渋滞が多い日本は燃費改善効果が高いが、高速走行が多いとメリットは薄れる。

モーターや蓄電池のコストがかさむため、日本と米国の一部をのぞき、世界的には普及していないのだ。足元の原油安で世界的にガソリン価格も低迷している。「エコだけでクルマの価値を理解してもらうのは難しい」(豊島氏)

「エコ」のアピールは何番目?

そのため、トヨタは新型プリウスで4つのアピールをする。①かっこいい、②走って楽しい、③燃費がいい、④装備がいい。「エコ=燃費がいい」は3番目でしかない。“普通の”車として魅力を訴える作戦だ。

新型プリウスは「トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャ(TNGA)」と呼ぶ、トヨタの自動車づくりの革新を全面的に導入した第1号車種だ。TNGAは全体最適の視点から部品の共通化を従来以上に進め、生み出した余裕(コストやリソース)を車の魅力向上につぎ込む。豊田章男社長が掲げる「もっといい車づくり」を実現するための主軸だ。

シートの座り心地も改善した(撮影:尾形文繁)

TNGAの効果により、現行モデルより車体は低重心化。「かっこいい」かどうかは主観によるが、外観は間違いなくスポーティになった。ボディ剛性を高めることで、走りも飛躍的によくなったともっぱらの評判である。

今回、価格やグレードなどの詳細については語られなかったが、自動ブレーキなどの安全性も業界最高水準の機能を惜しみなく投入。「プリウス=さきがけ」に対するトヨタの気合いが感じられる。

他メーカーも含めて、日本でのヒットを疑う関係者はいない。本当の勝負は、年明け以降発売となる海外での評判だ。

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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