2つ目は、「製品戦略の見直し」だ。
ファーストカーの需要を満たす「カローラ」と「レビン」が、大衆向けセダン市場のロングセラーとして販売台数を支え、2022年までトヨタの中国販売で上位2位を占めていた。
しかし、BYDが2023年に投入したPHEV「秦PLUS DM-i」は、カローラより2割ほど価格が安く、セダン市場で一気にシェアを拡大させた。

セダンで苦戦する中、トヨタは最新のHEVシステムである「第5世代THS」を搭載した「カローラクロス」と「フロントランダー」を投入し、小型クロスオーバーSUVでセダン販売の減少分を埋めている。
さらに大型ミニバン(MPV)の「シエナ」、および姉妹車の「グランビア」が好調を維持。ミドルSUV「RAV4」の改良版も、コストパフォーマンスの高さで人気を集めている。
実際、2024年の販売台数を2021年と比べると、コンパクトセダン(カローラとレビン)が36万台減、中型セダン(カムリ、アバロン)が8万台減だった一方で、コンパクトSUVは20万台増、MPVが16万台増、EVは5万台増となった。
こうした製品戦略が、日系他社と比べて堅調な動きにつながったわけだ。

「残存者利益」というファクター
3つ目は、「エンジン車の残存者利益の獲得」だ。
中国というとEV化のイメージが強いかもしれないが、EVオンリーではなく、パワートレーンの多様化は依然として欠かせない。
エンジン車を必要とする利用シーンが残るとすれば、トヨタが残存者利益を獲得しやくなる。
2024年のブランド別販売台数をみると、NEV専業のBYDがトップとなり、フォルクスワーゲンとトヨタがそれぞれ2位、3位となっている。年間販売で100万台を超えたのは、上位3ブランドのみだ。
消費者のクルマ選びにおいては、NEVならBYDや新興勢、エンジン車なら高級車はメルセデス・ベンツ、BMW、アウディ、大衆車はフォルクスワーゲン、トヨタという選択肢が主流となっている。
一方、量産効果によるコストダウンが見込まれず、かつ競合企業を大きく上回るブランド力がなければ、自動車メーカーはエンジン車の残存者利益を享受できず、販売台数はさらに減少していくと予測される。
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