≪逆襲のトヨタ≫エンジン車の残存者利益+巧みな製品戦略で「中国での日本車衰退」を引き止める

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中国メーカー勢は、新技術・機能を備えるEVを投入する一方、PHEVを中心とする値下げ攻勢をかけている。

一方の日系各社は、電動化の対応が後手に回り、開発スピード、ソフトウェア制御、AIの採用などで中国勢に劣後していると言わざるを得ない。

中国の乗用車市場に占める日系ブランド車のシェアは、2020年の23.1%から25年1~4月の9.4%へと急落しているのだ。

ホンダの新ブランド「烨(イエ)」から発売された「P7」(2024年、筆者撮影)
ホンダの新ブランド「烨(イエ)」から発売された「P7」(2024年、筆者撮影)

トヨタは2021年~2023年の間に年間販売台数190万台を超え、中国進出以来の最も高い水準を維持。2024年には、6.9%減の177.6万台(ピーク比9%減)となったものの、他社と比較すると落ち込み幅は小さかった。

2025年4月単月の販売台数では、前年同月比20.8%増となっており、数少ないプラス成長の外資ブランドといえる。

トヨタが逆風下でも成長する3つの要因

なぜトヨタは、逆風下でも外資企業の中でそれなりの実績を維持できたのか。その要因を分析してみよう。

1つ目は「値下げ戦略の奏功」だ。

値下げ競争に慎重な姿勢を続けたホンダに対し、トヨタは主力モデルの値下げで中国勢に対抗している。

中でも「カローラクロス」と「フロントランダー」の価格を「10万元切り」の水準まで値下げし、コストパフォーマンスの高さをアピールする。

「カローラクロス」の兄弟車となる「フロントランダー」(筆者撮影)
「カローラクロス」の兄弟車となる「フロントランダー」(筆者撮影)

2024年に投入した新型「カムリ」は、インフォテインメントシステムのディスプレイを12.3インチに拡大し、自動音声でエアコンの温度調整など、消費者の好みに対応する装備を多く備えた。

その一方、HEVのベーシック版を17.98万元(1元=19.99円換算で約360万円)とし、先代よりも大幅な値下げに踏み切っている。

値下げ戦略は、短期的には販売台数の維持につながるだろう。しかし、中長期で見れば収益に影響を与えると考えられる。

実際、トヨタの中国事業の営業利益は販売費の増加などを受け、2022年度の5251億円から2024年度の3896億円へと減少した。

だが、系列の部品サプライヤーとディーラーの収益を維持するためには、一定規模の販売台数が必要であり、トヨタにとっては、コストが適正であれば値下げで反撃すべきであろう。

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