≪逆襲のトヨタ≫エンジン車の残存者利益+巧みな製品戦略で「中国での日本車衰退」を引き止める

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2025年1~4月に出荷台数2万台以上の車種数を見ると、トヨタとフォルクスワーゲンがともに9車種であるのに対し、ホンダは3車種、日産は2車種に過ぎない。

足元では、トヨタの中国販売に占める電動化率(HEVを含む)が2022年の29%から52%とへ上昇し、「GA-Kプラットフォーム」を採用する中高級車でも約半分となった。トヨタの電動化率は、日系他社よりも、高い水準にある。

好調のスタートを見せるトヨタの新型EV「bZ3X」(筆者撮影)
好調のスタートを見せるトヨタの新型EV「bZ3X」(筆者撮影)

EVの販売台数も、実数としては少ないものの、昨年比では大きく伸びた。トヨタは当面、利益が減少しても耐えられる体制になったといえるだろう。

中国勢EVの成長と値下げ攻勢の中で

今後、トヨタが値引き攻勢で販売台数を維持していくと、それがホンダ、日産の中国販売に影響を与え、関連サプライヤーは事業統合や再編を余儀なくされる。

BYDはさきごろ、これまで高級モデルにオプション搭載していた高度な運転支援システムを低価格車にも搭載し、「低価格から新価値へ」と戦略の転換に踏み切った。

価格を維持しつつ装備や機能を追加することは「実質的な値下げ」であり、BYDは電動車でトヨタやフォルクスワーゲンを引き離す意向を隠さない。

2025年5月、BYDは主力ブランドの22モデルを値下げ。小型EV「シーガル」はおよそ2割引きの5.5万元(約110万円)とし、再び価格破壊を起こした。

かかるなか、BMWやアウディなどドイツ系高級車は、値下げ攻勢でトヨタの中高級車と競合している。また、大衆車市場での競争優位性の維持が難しくなるアメリカ系は、大型車やオフロード車を投入し、中国勢が参入しにくいニッチ市場に注力する。

各社の狙いは、中国事業の基盤となるエンジン車の販売減を食い止め、既存のエンジン車のファンをキープすることだ。

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トヨタは競合の攻めを注視しながら、中国の合弁パートナーやテック企業との協業を通じて、段階的にEV戦略を進めている。

新型EV「bZ3X」の好調から、消費者の要望をしっかりと研究し、その要望に応える電動車づくりに取り組んだ。その結果が、出ているといえる。

今後、トヨタが初心に返る覚悟をもって本気で中国戦略を実行すれば、中国市場で日本車衰退の一途から脱出できる可能性は十分あるだろう。

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湯 進 みずほ銀行ビジネスソリューション部 上席主任研究員、上海工程技術大学客員教授

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タン ジン / Tang Jin

みずほ銀行で自動車・エレクトロニック産業を中心とした中国の産業経済についての調査業務を経て、日本・中国自動車業界の知見を活用した日系自動車関連の中国事業を支援。現場主義を掲げる産業エコノミストとして中国自動車産業の生の情報を継続的に発信。中央大学兼任教員、専修大学客員研究員を歴任。『2040 中国自動車が世界を席巻する日-BYD、CATLの脅威』(日本経済新聞出版、2025年)、『中国のCASE革命 2035年のモビリティ未来図』(日本経済新聞出版、2021年)など著書・論文多数。(論考はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です)

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