彼の作業を見ているとすべての皿を予洗いしていた。予洗いが必要かどうかを見極める時間よりも、さっさと全部予洗いしたほうが早いということだ。食洗機はただのすすぎマシンである。
そして狭いスペースの中で右足を上げ、膝と壁との間にラックを挟み、どんどん皿を差し込んでいく。空いた右手で食洗機のドアを開けて洗浄済みのラックを取り出し、膝の上のラックを食洗機に入れるという、曲芸のような作業を高速で行っていた。
「これ、毎日やってるんですよ」
ケロっと言い放ち、相変わらず曲芸を続ける彼のすごさに見とれながら、ピークが過ぎるまでは食材の準備やドリンク注ぎ、そしてお客様の皿を下げるバッシングなどを行った。

YOUは何を食べに日本へ?
バッシング作業をすると、どのようなお客様が何を食べて、何を残したのかがわかる。
前述の通り外国人のお客様が大半のこのお店では、日本の味が合わなかったのか、ほとんど口をつけずに退店したお客様もいる。普段のタイミー先でももちろん食べ残しはあるが、ここでは残すときは丸ごと全部残す、という大胆な残し方が散見された。
近年、京都では「1泊2食付き」をやめる旅館が続出しているのだという。それは、外国人観光客がイメージしたような日本食とは違い、食べ残しなどのロスが多く出ているためだという。
このお店で最も残される料理は「おみそ汁」だ。出汁のきいたみその味、これぞ日本を代表する風味だが、海外、特に西欧の方々にしてみれば、かなりエキセントリックな味なのかもしれない。また、メインディッシュであるトンカツや唐揚げすら丸ごと残すお客様もいて、もったいないと思いながらバッシングする。
日本食は世界に誇れる食文化であることは疑うべくもないが、すべての外国人にすべての日本食が受け入れられるなんてことはないと感じた。
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