《東京藝大に6回挑戦も不合格》 それでも彼が浪人を肯定する訳 「早く大学に入るのが怖かった」と語る真意も

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浪人前から「3浪くらいはしても仕方がない」と覚悟していたものの、ついにその猶予が終わってしまいます。

このころには先生にも「もう予備校で教えることはないから夏期講習・冬期講習だけくればいいよ」と言われていた岡部さん。

浪人生活も4年目に突入し、つらい心境だったのだろうと思いましたが、彼は意外にも、「多浪に抵抗はあまりなかった」、「浪人はそんなに苦痛ではなかった」と語ります。

「周囲の人もたくさん浪人していたことも影響している」との前提もありつつ、その言葉の背景には、彼の将来に対する想いがこもっていました。

「僕は大学に受かるというよりは、長期的に見て、絵を描くのに必要な能力を養いたかったのです。僕は絵に関わって食べていければなんでもいいと思っていましたが、そのためには基礎的な部分をしっかり鍛える必要がありました。

美大受験は目を惹く魅力的な作品であればデッサンができていなくても認めてもらえる部分があります。かつては自分もそのような絵を描いていましたが、絵で生きていくには予備校で絵の勉強をさせてもらえる環境が必要でしたし、長期的に役立つ基礎的な力を身につける必要がありました。

美大に入ってからは絵の技術的な訓練があるわけではないので、入るまでに身につけた力が重要になります。だから、むしろ早く受かりすぎると絵を描いて上達できる環境がなくなるのを恐れていました」

5浪でついに多摩美術大学に進学

「もっと予備校で勉強したい気持ちもあった」と語るほど、毎日絵を描いて、将来、絵で食べていくために必要な能力を積み上げていっている感覚があった受験時代。だからこそ、この浪人時代は、彼にとってはかけがえのない時間だったのです。

濱井正吾 浪人 多摩美
受験時代の岡部さんの作品(画像:岡部さん提供)

4浪に突入した岡部さんは、夏期講習・冬期講習に行く時期以外は朝5時に起きてコンビニでアルバイトを開始し、昼ごろに家に帰ってきて夜まで絵を描く生活を送ります。

4浪目も東京藝大一本で不合格になり、5浪目も4浪と同じような生活を続けますが、「そろそろ大学に入らないといけないかな」と感じ始めたそうで、初めて東京藝大以外に多摩美術大学の美術学部絵画学科油画専攻と、東京造形大学の造形学部美術学科絵画専攻領域に出願します。

多摩美術大学の美術学部絵画学科油画専攻(2024年度)の入試は、以下の通りです。

専門試験:デッサン(6時間)+油彩(6時間) 300点
学科:国語(60分) 100点 英語(60分) 100点
合計:500点

6度目の藝大受験も、残念ながら不合格。しかし、多摩美術大学と東京造形大学には無事合格し、多摩美術大学に進学を決めて5浪で受験を終えました。

濱井正吾 浪人 多摩美
現在の岡部さん(写真:岡部さん提供)
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