海底撈、ココス、くら寿司…。“映え”に疲れたZ世代が、大衆チェーン店に求めた新しい共感の形態
その象徴とも言えるのが、2年ほど日本のZ世代の間に広まり始めたSNSアプリ「BeReal.」だ。毎日ランダムなタイミングで通知が届き、その2分以内に撮ったスマホの前後両カメラで撮影する“素の自分”を投稿するという仕組みで、時間もなく加工もできない不意打ち感が魅力だ。
まさに寝起きの顔や授業中の退屈な表情、ひとりで歩いている時など、「気まずい瞬間」や「なんでもない日常」をシェアすることが、仲の良い友人たちとの笑いのタネになっている。演出された美しさよりも、意図せず撮れた“シュールなリアル”がウケる時代だ。
こうした傾向が、友人の誕生日お祝いのシーンにおいても進出し始めているのだ。
おしゃれなレストランでも特別感はない
もともと大衆チェーン店で特別な日である誕生日を祝うという行為は「ちょっと気まずい」「恥ずかしい」という認識はあった。が、インスタの普及により、あまりに多くの若者が(そして中高年までもが)“映え”を求めるようになったことで、おしゃれなレストランでのお祝いや投稿程度では特別感がなくなったのだ。
そこで、あえて大衆チェーン店で「気まずさ」を演出することが「ありきたりなインスタ映え」から脱却する手段になりつつある。
ただし、SNSネイティブのZ世代にとって、お祝い事を画像や映像で記念として残し、サブ垢で親しい人たちと共有することが前提となっているため、「面白いネタ」や「突然のハプニング」や「気まずい」瞬間を確実に撮影できる場が重要となってくる。こうした彼らのニーズにマッチしたサービスを提供してくれる大衆チェーンが今人気なのだ。
中国発の人気火鍋チェーン「海底撈火鍋」では、派手な電光掲示板や大声の歌唱、さらには派手なうちわを使った誕生日サプライズサービスがある。
突然5人程度のノリノリの店員に囲まれ、店内に響き渡る大音量の音楽に合わせて1分近くの長尺で祝われるのというものだ。サプライズを注文した客は他人から多大な注目を浴び、その時の祝われている友人の気まずそうな姿を楽しみ、その様子を撮影してSNSのサブ垢に投稿するのだ。

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