父親が絶好調になったタイミングで大輔さんの過去を伝えた。父親は「梅干を丸ごと食べたような」表情になり、言葉が出なくなったという。瑞希さんと大輔さんはそのまま頭を下げて退出。大賛成とは言えないが反対はされずに結婚できる運びとなった。
「父がもう少し若かったら、ひどいことを言って反対していたかもしれません」
ホッとした表情の瑞希さん。年齢を重ねてからの結婚は、気力・知力・経済力が親と逆転していることも多く、2人のような難しいケースでも乗り切れたりする。
大輔さんの父親も同じぐらい保守的な考えの持ち主だったが、大輔さんが性同一性障害であることを知らずに他界している。地元にいるのは母親と独身の兄だけで、瑞希さんは大歓迎を受けたらしい。
「『賢くて、感じのいい女性だね。お前にはもったいない!』と兄から言われました」
誇らしげに語る大輔さん。気づくと、インタビューを受けながらテーブルの下では瑞希さんと手をつないでいる。こちらが恥ずかしくなるほどの仲の良さだ。
価値観のズレも当然ある
大輔さんは福祉関連施設で働いており、夜勤もある。2人でゆっくり過ごせる時間は少ない。それでも瑞希さんは心身ともに明らかに健康になり、毎日が楽しいと断言する。
「私も料理が趣味ですが、大輔さんが作ってくれる料理もとても美味しいです。夕食のおかずを翌日のお弁当にして職場に持って行くと、同僚から『旦那さんが作ってくれたの? 超ラッキーじゃん!』なんて羨ましがられます」
もちろん、45年間も別々に生きてきた2人なので価値観が異なる点もある。特にお金の使い方や持ち物に関してはぶつかることが少なくない。
「大輔さんはミニマリストで、シェアハウスで住んでいたときは自室に食器がありませんでした。タッパーに入れておいたおかずをタッパーの蓋をお皿にして食べたりするんです。彼一人のときはそれでいいけれど、私と一緒のときはやめてほしい。私の美意識が許せません」
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