ホークスの圧倒的強さを支える「3軍」の正体 選手が自然と育つ仕組みがそこにあった
思い切った選手獲得ができるのも、3軍制度がもたらすメリットの一つだ。
結果を度外視した起用ができる
昨秋のドラフト会議、ソフトバンクは最後に島袋洋奨という左投手を指名した。2010年に興南高(沖縄)のエースとして甲子園春夏連覇を成し遂げた逸材だが、中央大学進学後にフォームを崩し、大学4年時にはまともにストライクが取れなくなるほど状態が悪化していた。
どの球団も島袋の指名を回避するなか、ソフトバンクは5位で指名。入団当初の島袋を回顧する小川3軍監督の顔には、苦笑が浮かんでいた。
「島袋はストライクが入らなくて、よく試合を壊していましたよ(笑)。本来、こういう選手は2軍では投げる機会を与えることさえ難しい。それでも、3軍ではある程度、結果を度外視して起用することができます。島袋も3軍で一生懸命、練習に取り組んでいました」
島袋の3軍での成績は、登板数21、投球回22.2/3、被安打27、与四球26、防御率10.32。プロ、しかも3軍の成績としては絶望的と言える。だが、実戦経験を重ねるなかで徐々にコントロールがまとまってきた。8月には2軍でマウンドに上がれるようになり、そこで結果を残した島袋は、9月下旬には1軍デビューを果たすまでになる。小川3軍監督が言うように、2軍制のチームなら21試合の実戦経験を積むことはできなかっただろう。
「面白い一芸を持った選手をドラフトで獲得しやすくなりましたね。たとえば、この部分は90点だけど、こっちは20点……という選手がいたら、『育成選手として指名して鍛えよう』という発想になる。どうしてもプロに行きたい選手にチャンスを与えることになるし、球団としてもリスクは小さい。たとえば千賀(滉大)なんて高校時代は体が弱かったので、育成選手制度がなければプロに入れなかったかもしれません」(小川3軍監督)
3軍で思う存分に育成ができるということは、2軍にもいい影響をもたらす。2軍でプレーするのは、決して伸び盛りの若手ばかりではない。チーム事情や故障などで2軍にいるが、いつ1軍に呼ばれてもいいように準備をしている、準・1軍選手もいるのだ。
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