昭和スタイルの企業を変革した若手社長 伊勢の食堂を「年間売り上げ2500万円」「あわび串1日1500本販売」まで押し上げた”絶妙な発想”とは

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自作ながらも、メンバーとわいわいと作っていましたが、「いかに楽しむか」を意識することも大事です。

「今あるもの」を見直して改善する

同時にメニューそのものの見直しにも取り掛かりました。

私は料理を残されたお客様に、ヒアリングをして回りました。

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「本当はどんなメニューが食べたいか」と。

お客様から様々な返答をいただきましたが、ひと言でまとめるなら「おいしいものが食べたい」に尽きます。

では「おいしい」とは何か。

それは「素材が良い」「鮮度が良い」の2点に集約される。

これが私の結論です。

「ゑびや」で提供するのはシンプルな和食が中心です。刺身にしろ、焼き物にしろ、とびきり新鮮で質の良い魚介や肉を使えばおいしくなるはずです。

そこで、新たな流通網をいちから構築しようと決意しました。

「原材料の仕入れ先」から「食材の保存方法」まで、素材の調達に関するすべてを見直したのです。

新鮮な食材を生産者からダイレクトに仕入れ、鮮度を保ったまま保存・配達する仕組みをつくることができれば、おいしい料理をお客様に提供できます。

そこで、三重県内の漁業者を訪ねて回り、直接取引してもらえるよう交渉を重ねました。

並行して物流に関する最新技術のリサーチを開始。

すると、新鮮なまま保存・配送できる「ナノアイス」と呼ばれる特殊な氷があることを突き止めます。

ナノアイスを研究している三重大学、そして県内事業者や水産関係者に協力を仰ぎ、三重県のとある漁港の水産業者とタッグを組んでこの物流網に挑戦しました。

そしてついに、2014年、新鮮で質の高い地元産食材を確保する仕組みを確立したのです。

「ゑびや」では伊勢海老や真鯛など、地のものを使ったメニューが増え、この地域の食堂ならではの特色を出せるようになりました。

お金や専門スキルがなくても「現状を変えるために今できること」はあるはずです。

私は「この食堂を改革してやろう」などと鼻息荒く取り組んだわけではなく、当時は会社や事業が生き残れるように毎日が必死でした。

どんなに小さな一歩でも、前に進めるならやってみる。

このマインドセットこそが会社を変える最大の推進力になります。

小田島 春樹 実業家

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おじだま はるき / Haruki Odajima

三重県伊勢市にある妻の実家の老舗店を受け継ぎ、「ゑびや」代表に就任。AIなどを用いたデータ分析を取り入れ、経営改革に取り組む。2018年、株式会社EBILAB(エビラボ)を立ち上げ、来客予測を主軸としたデータ分析システムのサービス開始。マイクロソフト「People who inspired us」にて事例が紹介されるなど、世界からも注目を浴びている。

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