Netflix歴代5位「アドレセンス」 アマプラが不採用、Netflixで大ヒット 「現実的な物語」がなぜここまでウケたのか

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強烈な印象を与えるテディベアのシーン

ただし、闇雲に不安を煽るだけで終わりません。大人たちに警鐘を鳴らしますが、その伝え方は押しつけがましいものでもありません。子育てに悩む親が少しでも“マシな親になりたい”と思っていれば、ヒントをもらえるはずです。

たとえば、ジェイミーを担当する刑事とその息子との会話は、子どもとの関わり合い方をさりげなく示しています。不登校がちの息子を心配するも何をしていいのかわからない父親の姿を描くなかで、ある気づきを得た後、息子に「一緒にポテトとコーラを買いに行かない?」と声をかけます。さらに「少し時間があるから、お前と過ごしたい」というせりふが続きます。時代がどれだけ進もうと、子どもと会話するきっかけを作り、親子の時間を過ごすことが、子どもの問題を解決する最善の方法であることを印象づけています。

そして子どもとの関わり合いの意味に重みを感じるのは、やはりドラマの主人公であるジェイミーの父親の描写です。4話は50歳の誕生日の朝を迎えた父親と家族の物語を描いています。ネタバレは避けますが、家族ひとりひとりの役割を見つめるなか、ラストの言葉にこのドラマが伝えたい直接的なメッセージを集約させています。ジェイミーの部屋にあるテディベアのぬいぐるみを抱きながら泣き崩れる父親の姿は強烈です。何を思うのか、人それぞれの受け止め方がありそうです。

“マシな親になりたい”と願う親たちにヒントも与える
“マシな親になりたい”と願う親たちにヒントも与える(画像:Netflix)

父親役を演じたグラハムは、イギリスで10代の少年たちが10代の少女たちに対する暴力行為が続発した実際の事件から着想を得て、自ら企画したことを明かしています。「愛情と誠実さ、尊重の念をもって作った」そうです。Netflix公式ファンページTUDUMで語っています。正真正銘の社会派ドラマが今ヒットしたことは、必ず意味を持つはずです。子どもたちが直面している現実を大人たちがどう理解するのか、問われています。

長谷川 朋子 コラムニスト

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はせがわ ともこ / Tomoko Hasegawa

メディア/テレビ業界ジャーナリスト。国内外のドラマ、バラエティ、ドキュメンタリー番組制作事情をテーマに、テレビビジネスの仕組みについて独自の視点で解説した執筆記事多数。最も得意とする分野は番組コンテンツの海外流通ビジネス。フランス・カンヌで開催される世界最大規模の映像コンテンツ見本市MIP現地取材を約10年にわたって重ね、日本人ジャーナリストとしてはこの分野におけるオーソリティとして活動。業界で権威ある「ATP賞テレビグランプリ」の「総務大臣賞」の審査員や、業界セミナー講師、札幌市による行政支援プロジェクトのファシリテーターなども務める。著書は「Netflix戦略と流儀」(中公新書ラクレ)。

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