「逃げ癖がつく」「情弱ビジネス」との声もあるが…。新卒利用が急増の「退職代行」。ブラック企業と裁判した男性が”違和感”を覚える箇所

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結局、裁判官からの強い説得もあり、最終的に解雇は撤回。高額な賠償金が支払われる「和解」の道を私は選択した。

裁判後、インタビュアーとして業界最大手「退職代行モームリ」を運営する株式会社アルバトロス・代表取締役の谷本慎二氏(36歳)に取材する機会に恵まれた。

谷本慎二氏
株式会社アルバトロス代表取締役・谷本慎二氏(同社提供)

私は自身の体験について語ったうえで、ブラック企業と戦うことについてどう思うか質問した。谷本氏からはこのような回答があった。

谷本氏「ブラック企業を訴えることができる人って、たぶん少数派だと思うんです。弁護士費用とか、裁判での労力とか、やっぱり大変じゃないですか。だから僕は『会社と戦う』よりも『会社から逃げる』ほうがいいのかなって。もちろん本人の気持ち次第ですし、ケースバイケースだとは思いますけど……』

退職代行を利用される企業の特徴

ベストセラー書籍『ブラック職場があなたを殺す』(日本経済新聞出版社)によると、人間は自分の意志で選んだ以上、その判断を正しいと考え、最初の決定を貫き通そうとするコミットメント効果(一貫性の法則)が働く。

また劣悪な労働環境が当たり前の職場では、我慢の限界を迎えた社員は退職するので、組織内は洗脳された人間であふれる。その結果、「弱音を吐く人が間違っている」といった価値観に染まりやすい。つまり個人も組織も「異常状態が正常状態」になる。

いつか私もブラック企業に苦しんでいる人の役に立つ、そんな本を出版したい(著者撮影)

戦うのが容易でないのなら、心と身体が壊れてしまう前に「逃げるが勝ち」を選ぶことは筋が通っている。またそれを後押し、手伝ってくれる退職代行には社会的意義があるようにも思う。

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