「逃げ癖がつく」「情弱ビジネス」との声もあるが…。新卒利用が急増の「退職代行」。ブラック企業と裁判した男性が”違和感”を覚える箇所

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あくまで現在の考えだと前置きしつつ、「もし当時、退職代行サービスがあったなら、利用すべき」だと考えている。なぜなら、ブラック企業を辞めなかったことで、私は「ツケ」を支払う必要に迫られたからだ。その「ツケ」とは……2社から「クビ」を宣告されたことだ。

私は23歳のときに新卒入社した美容の専門商社から、29歳のときに中途入社した運送会社から「クビ」を宣告された。2社で共通する解雇理由は、公には勤務態度不良といった言葉で処理されていたが、その本質は私が「サービス残業をしないから」だ。

1社目に在籍中、私は手取り16万円で毎月100時間近く、サービス残業を強いられていた。有給は冠婚葬祭以外の理由で使えない。上司からの暴言、草むしりやトイレ掃除などの嫌がらせ、殴る蹴るなどの暴力行為もあった。

著者が新卒入社した会社では、タイムカードの退勤時間の打刻が禁止されていた(著者撮影)

2社目は1分単位で残業代が出た。有給も自由に使うことができた。上司から暴力を振るわれた経験もない。しかし勤務時間外だろうと会社携帯を(サービス残業で)対応するよう指示されていた。早朝の5時や休日の昼過ぎなど、いつどこで電話が鳴るかわからない。

心身ともに限界を感じた私は、サービス残業を強いるのは勘弁してほしいと、会社に異議を申し立てた。その結果、どちらの会社からもクビを宣告された。信じられない人が多いだろうが、労働者が強いと言われているこの国でも「ブラック企業」は存在するのだ。

転職活動の際、履歴書に「ブラック企業だったかどうか」という情報は記載されない。けれど「会社をクビになった」という不名誉は記載される(今や、多くの会社で採用の際にリファレンスチェックが行われている)。また、日本では一般的に「正社員の解雇は難しい」とされており、「解雇されるなんてダメ社員に違いない」と判断する人は少なくない。

つまり解雇は、キャリアの一生傷になる。そして、ブラック企業は、普通に存在している。ブラック企業は常識も法律も通用しない。だから、あなたを迷わず「クビ」にしてくる。

私は、ブラック企業を辞めなかった「ツケ」を支払う必要に迫られた。このようなトホホな状況になる前に、退職代行を使うなどして「逃げるべき場合もある」ことを私は訴えたい。なおこの2社は今現在も存在しており、毎年求人を出し続けている。

「ブラック企業と戦う」はオススメできない

迷いに迷ったうえで、私はそれぞれの会社を訴えた。不当解雇を求めて、約2年間ずつ裁判で争ったのだ。

私は「自分は解雇されるまで間違ったことはしてない」と信じていた。信じたかった。会社に良くなってほしい、変わってほしい、気が付いてほしいという想いもあった。

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