アマゾンはスターリンクに続くか? ついに「衛星打ち上げ」も、"暗雲立ち込める"現実…あと1年で1591機打ち上げは可能なのか?

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

FCCは「カイパーの認可は、期日の段階で運用している衛星数まで削減される可能性がある」としている。つまり、期日の段階で打ち上げられたのが仮に500機ならば、本来3236機で展開しようとしていた事業を、たった500機で行わなくてはならないのだ。

衛星コンステレーションの数が予定に達しない場合は通信品質の低下をまねく可能性があり、サービスの魅力が損なわれる。個人や事業所向けのサービスを打ち出しているアマゾンにとっては痛手だろう。少なくとも、サービス開始の目標である578機は最低限の衛星数として揃えたいところだ。

契約中のロケットは1回で衛星を27~50機搭載できることから、来年夏までに12~20回程度は打ち上げが必要だ。今後は毎月、カイパー衛星打ち上げのニュースが聞こえてこなくてはならないはずだ。

アマゾンは期限延長の申請をする?

アマゾンも、手をこまねいて衛星の認可が減らされることを待つとは考えにくい。

日本国内で衛星通信の電波法関係法令を担当する総務省によれば、他国の事業者の動向については推測にとどまるとの条件付きながらも「打ち上げが期日までに間に合わないということであれば、期限延長を求める可能性もあるのではないか」(総務省総合通信基盤局 電波部基幹・衛星移動通信課、同電波部電波政策課 国際周波数政策室)とコメントした。

衛星打ち上げの50%ルールは、使用しない衛星の周波数を早いもの勝ちで申請しリザーブしてしまうという行為を防ぐためにある。遅れてはいてもアマゾンは実際に衛星打ち上げを実施しているので、規則の趣旨を考えれば免許を取り消すまでにはいたらないとも考えられる。

ただ、最大限の努力が求められ、コストをかけてロケットの打ち上げを急がなくてはならない。先行するスターリンク、ペースを加速している中国との競争の中で、アマゾンの衛星網がインターネット接続の選択肢として選ばれる存在になることは、そうたやすくはない。

秋山 文野 サイエンスライター/翻訳者(宇宙開発)

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

あきやま あやの / Ayano akiyama

1990年代からパソコン雑誌の編集・ライターを経てサイエンスライターへ。ロケット/人工衛星プロジェクトから宇宙探査、宇宙政策、宇宙ビジネス、NewSpace事情、宇宙開発史まで。著書に電子書籍『「はやぶさ」7年60億kmのミッション完全解説』、訳書に『ロケットガールの誕生 コンピューターになった女性たち』ほか。2023年4月より文部科学省 宇宙開発利用部会臨時委員

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事