高齢化社会の視点が強調されると、寿命が長くなることを「機会」ではなく、「問題」と位置づけがちになる。そのような発想は、高齢者が増えすぎていて、人々が長生きしすぎているという、有害な考え方につながりやすい。そして、人生のあらゆる時期に行動を起こすのではなく、人生の最終盤にばかり関心を払う傾向を強める。
その結果、若い世代が長寿に備えるのを支援するより、高齢者のニーズに応えるために資源が費やされることになる。そうなれば、若者世代と高齢者世代の世代間対立が激化するだろう。
長寿化へどう適応すべきか
いま本当に求められているのは、人類を取り巻く状況の劇的な変化に、つまり若い世代が非常に高齢まで生きることが当たり前になる時代の到来に適応することだ。
そのためには、長寿化により突きつけられる課題を克服し、エバーグリーン型への転換を遂げる必要がある。人々が長い人生を生きるための準備を整えられる社会をつくり、長くなった人生の「生活の質」を「人生の量」と釣り合うものにすることが求められるのだ。
そうすることではじめて、私たちは、人生の時間が増えることにより生まれる機会を存分に活用できる。本書では、そのために個人と社会がどのように変わらなくてはならないのかを論じたい。
世界各国の政府と政策決定者たちは何十年も前から、大規模な人口動態上の変化が進んでいることを認識していた。しかし、高齢化にばかり関心が払われる結果、真に切実な課題に十分に目が向いていない。
問題は、高齢者の数が増えることに将来どうやって対処するかということではない。長い人生に対処するために、私たちがいまどのように行動するかが問題なのだ。これまで対策らしい対策が取られてこなかったことを考えると、いますぐに大きな変化を起こす必要がある。
さあ、エバーグリーンの課題に向き合おう。
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