ロンドン・ビジネススクールの授業で投げかけられる世界の「経済トレンド」。AIと気候変動と同じくらい重要なテーマとは何か

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本書では、ひとりひとりの個人と人類全体にとって、どうしてこのような長寿化の課題が重要なのかを説明していく。また、エバーグリーン型への転換を遂げるためにどのようなイノベーションが必要とされるのかも詳しく述べたい。

具体的には、私たちの人生計画やキャリアプランの立て方、医療制度や経済と金融業界のあり方、「高齢者であること」や「老いること」についての文化や思想をどのように根本から変えるべきかを論じる。

ロンドン・ビジネススクールで教えていること

また、この本を通じて、長寿化というテーマにあまり関心が払われていない状況を改めたいとも思っている。長寿化は、本来は非常に重要なテーマであるにもかかわらず、それにふさわしい関心が払われているとはお世辞にも言えない。

それに輪をかけて問題なのは、長寿化が話題にされる場合にも、しばしば誤った認識がまかり通っていることだ。社会の「高齢化」、つまり高齢者の数が増えることにしか目が向けられないことが多いのだ。このような無関心と誤解を是正したいというのが、私がこの本を執筆した大きな動機だ。私たちが議論し、築くべきなのは、高齢化社会ではなく、長寿社会なのである。

私はロンドン・ビジネススクールで「世界経済」という講座を担当している。その第1回の授業で、いつも学生たちに投げかける問いがある─向こう数十年の間に、あなたたちの人生とキャリアに大きな影響を及ぼすトレンドはどのようなものだと思うか、という問いだ。

私はホワイトボードの前に立ってペンを手に握り、学生たちの回答を書き出す態勢を取る。けれども、実はどんな答えが返ってくるかはもうわかっている。真っ先に挙がる2つの要素は、いつも同じなのだ。それは、人工知能(AI)と気候変動である。私たちの世界を様変わりさせるのがこの2つの要素だという点では、世界の国々の政府と企業と個人の見方が一致している。

それでも、この2つのテーマをひとしきり議論したあと、学生たちはほかの要素にも目を向け始める。次々と意見が述べられて、賑やかに議論が交わされる。やがて教室の熱気が少し落ち着き、あまり手が挙がらなくなった頃、誰かが発言する──「人口動態の変化は?」。この発言を受けて、私がもう少し掘り下げた議論を促す。人口動態の変化とはなにを意味するのか、と尋ねる。

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