ロンドン・ビジネススクールの授業で投げかけられる世界の「経済トレンド」。AIと気候変動と同じくらい重要なテーマとは何か

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その場合、変わるのは人生終盤の日々だけではない。将来もっと長く生きるようになると思えば、現在の行動も変わる。人生の一部の時期だけでなく、人生全体の生き方を考え直すようになるのだ。

いまのままだと、私たちは寿命が延びることの恩恵に浴せない。現状では、個人も社会も、人類に起きつつあるきわめて大きな変化、すなわち、誰もが非常に高齢になるまで生きる可能性が高くなっていることに、十分に適応できていない。

問題は、この変化がそれほど大きな変化だと感じづらいことだ。歴史上、どの時代にもお年寄りはいたし、その人たちも老いの過程を経験していた。しかし、いま起きつつある変化が本当に革命的な点は、若者や中年が非常に高齢まで生きることが当たり前になったことにある。

人類の長い歴史を通じて、高齢者と呼ばれるまで生きる人はあくまでも少数派だったが、それが多数派になろうとしているのだ。この新しい状況は、あらゆるものごとを変える。

よりよい結果を手にするためには、未来への投資をもっと増やさなくてはならない。それを怠れば、私たちは最も恐れる結末を迎えることになりかねない。寿命が延びた結果、避けて通ることのできない必須課題が生まれたのである。その必須課題とは、よい老い方をすることだ。

老い方を変えて、増えた時間を最大限活用

本書『ライフ・シフトの未来戦略』では、長寿化がもたらす抜本的な変化と、それによって持ち上がる新しい課題をテーマにする。私たちは個人単位でも社会全体でも、言ってみれば「エバーグリーン(evergreen)型」への転換を果たさなくてはならない。

メリアム・ウェブスター・カレッジ版英語辞典によると、「エバーグリーン」とは「季節を通して緑の葉をつけ、機能し続ける」常緑植物について用いられる言葉だが、広い意味では「つねにあらゆる局面で新鮮さを失わない」状態をあらわす。

私たちは、長い人生でこれを目指すべきだ。人生が長くなるのに合わせて、健康やその他の重要な要素が機能する期間も長くしなくてはならない。人類が過去に実現させた進歩は、私たちの寿命を延ばした。これから実現させる進歩では、老い方を変えることにより、人生で増えた時間を最大限有効に活用する方法を見いだす必要がある。

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