韓国「アジアのベスト50レストラン授賞式」主催で見せた"圧倒的"存在感のワケ。Netflix「白と黒のスプーン」ヒットに乗せた食の戦略的展開

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

拡大

今回アジア8位を獲得した「ラシーム」(大阪)のシェフ高田裕介さんは、韓国のレストランの現在について次のように述べる。

「韓国のレストランは、いま全体的にみんな伸びているような感じがします。先日三つ星を取った『ミングルス』はもちろん、最近では今回23位に入った『セブンス・ドア』のシェフが出した精進料理の店『ビウム』は素晴らしかったですね。料理はもちろん見せ方もうまい。このビウムの料理は今後、アジア以外の他国にも波及しそうな新しさを持っています」(高田さん)

今回、韓国側の主催者から感じられたのは、このイベントを通じて、国内外に韓国料理の歴史の長さや料理の奥深さを広めたいという意思だ。国としてこの機会を活用し、韓国料理の知名度を上げたいという思いが端々に感じられた。そこに『白と黒のスプーン』の話題性がタイミングよく加わった。

韓国の外食費は年々増加している。年度別世帯当たり月平均の外食費は、2000年から2008年の9年間で1.6倍に増加している。しかし韓国の人口は5100万人(2023年現在)と国内マーケットは日本より小さく、韓国料理のマーケットを広げるには、海外からの流入が不可欠だ。

授賞式開催都市となる大きなメリット

日本の都市において、同じイベントを招致するメリットはあるだろうか。

日本のレストランの質の高さは前述のように海外でもすでによく知られており、その証左として、ベスト50アジアでのランクインもすでに11軒ある。ではすでにオーバーツーリズム気味の日本において、このようなイベントが意味がないかというと決してそうではない。

日本でいま求められているのは、都市圏ではない国内のさまざまな地方に人々を注目させ、そこに実際に足を運んでもらうことだ。日本国内には、地方やそのテロワールを体現する個性あるトップレストランが数多くある。

実は一度、2020年に佐賀県が授賞式開催都市に決まったことがある。結局、新型コロナの影響により授賞式は行われなかったが、これがもし今実現すれば、その都市へ海外ゲストの目を向けさせ、その都市のみならず日本全体の食文化の知名度向上に資するにちがいない。

トップレストランを表彰するだけでなく、郷土料理やその土地に注目させるイベントを組み合わせることで、飲食関係者だけでなく幅広い立場の人に、地元食材や農産物に注目してもらえる機会が生まれる。

ファインダイニングを顕彰するこのイベントを、限られた人だけのものとするのはもったいない。世界的に知名度のある店だけでなく、気鋭のレストランにも焦点を当てるこのようなイベントは、食を楽しむ人たちの裾野を広げ、未来のファインダイニングの隆盛への種まきともなるにちがいない。

【写真】「アジアのベスト50レストラン」に入った日本のレストラン11軒の様子など(15枚)
星野 うずら レストランジャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ほしの うずら / Uzura Hoshino

出版社勤務のかたわら、アジアやヨーロッパなど海外のレストランを訪問。個人サイト「モダスパ+plus」やTwitter(@caille2006)で、「ミシュラン」「ゴ・エ・ミヨ」などガイドブックの解説記事やレストラン評を執筆。飲食専門のポータルサイトでシェフインタビュー連載中(飲食店.com)。Instagram(@photo_cuisinier)では、飲食に携わる人のポートレートを撮影している。
 

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事