韓国「アジアのベスト50レストラン授賞式」主催で見せた"圧倒的"存在感のワケ。Netflix「白と黒のスプーン」ヒットに乗せた食の戦略的展開
このドラマの成功は、シェフたちの実際の営業にも好影響をもたらしているようで、特にカジュアル店舗が多い「黒スプーン」の店は予約が全く取れなくなっているようだ。商品プロデュースをしたのだろう、出場シェフの顔を大きく入れたポスターが貼ってあるコンビニも見かけた。
韓国国内においてシェフの個性に注目が集まりつつあるいま、今年のベスト50アジアをホストするにあたり、韓国側は授賞式などの公式イベントの前後に独自のイベントをいくつか組み込んでいた。パンフレットのシェフ紹介欄には、ミシュランの星の数と並んで『白と黒のスプーン』出演が書かれていたあたりに、このドラマの韓国内での影響の大きさが読み取れた。
これらのイベントの特徴は、一般のゲストが参加可能だったことだ。
気鋭のシェフたちが料理を振舞うイベント(「テイスト・オブ・ソウル」)やトークセッションには一般のゲストが大勢訪れており、イベント終了後には、シェフとの記念撮影を求める人たちが壇の周りに列を作っていた。このイベントは前回2024年にも行われており、そのときは150名の参加枠に45万人を超える希望者が殺到、席は10秒で完売したという。
イベントで料理を振舞ったシェフは、星付き店から庶民的レストランまでさまざまだった。そのシェフたちを率いたディレクターのチェ・ヒョンソクさんは『白と黒のスプーン』で話題になったシェフで、インスタグラムのフォロワー数は25万人を超える。

このような、一般ゲスト参加可能なイベントを設定した主催者である韓国にはどのような事情があるのだろうか。それは、韓国の主催者側が、自国のファインダイニングの国際的な認知とともに、韓国料理の良さを自国民にこそ認識してほしいと強く考えているということだ。
日本を猛追する韓国のレストラン事情
韓国の食といえば、ひと昔前の旅行ガイドではビビンバやタッカンマリ、韓牛焼肉店の紹介ばかりで、ファインダイニングと呼ばれる高級店は一握りしかなかった。
東京に遅れること9年、2016年に初めて刊行されたミシュランガイドソウルの星付きレストランは24軒だった。それが2025年は、三つ星1、二つ星9、一つ星30にビブグルマン77、セレクテッド117軒(2024年から始まった釜山含む)となっており、今回の「アジアのベストレストラン50」にも4軒ランクインしている。
イベントで提供された料理はミシュラン星付き店からカジュアル店までさまざまだったが、一通り食べてみた感想としてどれも料理の質の高さが感じられ、全体として現在の韓国のレストランの底堅さをうかがわせた。ここ10~15年ほどのあいだに海外で学んだ若いシェフが帰国し、自分の店を持てるようになるほど韓国のレストランが成熟してきた証左でもある。
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