「談合の温床・大規模修繕は時代遅れ?」、無駄な工事で修繕積立金が枯渇、《マンション管理の新発想》資産を守る「中規模修繕」メリットと課題

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マンション修繕の打ち合わせ
マンションは大規模修繕ではなく、「中規模修繕」の時代?(写真:Graphs / PIXTA)

2025年3月、公正取引委員会はマンションの大規模修繕で数十年以上談合を繰り返してきたとして20数社に立ち入り検査を行った。大手のマンション修繕工事会社がほぼ根こそぎ公取委の検査を受けた状態だが、そもそもマンションの大規模修繕では談合が起きやすい。

談合防止だけでなく、資産の維持、修繕積立金の安定的な運用その他を考えると大規模修繕自体が時代遅れと指摘する人たちがいる。これからは中規模修繕を目指すべきというのだ。

歴史が浅く"横のつながり"の強い大規模修繕業界

そもそも大規模修繕の業界は談合あるいは忖度しあうような環境にある、と指摘するのは株式会社KAIライフサイクルマネジメントの菅純一郎さん。

その理由のひとつは、業界そのものの歴史と成り立ちにある。

建築設備の法定検査を業務としていた菅さんが最初に大規模修繕に関する相談を受けたのは40年ほど前の昭和末期。団地で問題が生じていると言われ、相談に乗り始めたのがきっかけで以降関わりができた。初期はノウハウもコンサルできる人もなく、試行錯誤が続いていたという。

歴史のない業界の常として大規模修繕の業界でも事業者は派生、派生で増えてきた。

「A社にいた人が独立してB社、C社を始め、B社にいた人がさらにという形で事業者が増えてきた業界です。談合以前に横のつながりが強く、悪意のない忖度も含めればなんとなく価格調整が行われ続けていても不思議はありません」と菅さん。

加えて談合につながりやすい慣習もある。それが事業者に相見積もりを依頼する際に設計監理を行う事業者が作る設計図書などの書類だ。規模にもよるが、この書類を作成するだけで数百万円などと費用がかかるものである。

この書類には工事の項目が細かく挙げられており、そこに記載されている数字をゼロにして各社に相見積もりを依頼するのだが、単価を入れるだけで総額が出る。その単価をちょっとずつ高くしたら総額が高くなるのは自明の理。

「大手管理会社は業者会などといった名称で大規模修繕を依頼する事業者の集まりを作っており、そこに相見積もりを依頼します。互いにどこが参加しているかがわかれば、その力関係などから受注調整などが起きる可能性は十分にありえます。全社がほんの少しずつ上振れした数字を出せば相場がいくらなのかは全くわからなくなります」

だったら、その都度違う事業者に見積もりを依頼すればいいと思うだろうが、それは現実的ではない。なんらかのビジネスをしている人ならわかるだろうが、年に何回もやる同じような仕事で毎回、ゼロベースで見積もりを依頼するのは互いに消耗するだけだ。

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