「談合の温床・大規模修繕は時代遅れ?」、無駄な工事で修繕積立金が枯渇、《マンション管理の新発想》資産を守る「中規模修繕」メリットと課題
佐々木さんが住んでいるのは1971年竣工、2025年時点で築54年、全63戸の都内にあるマンション。
最初は賃貸で入居、2006年に耐震性能が低く、建て替えができないことを知りつつも購入したもので、2011年の東日本大震災で激しく揺れた。そのため、2017年に耐震補強をしたのだが、それによって修繕積立金は残り6000万円ほどまでに激減した。
「高齢の居住者が多かったので一時金を集めることが難しく、積み立ててあったお金で賄ったのですが、そうすると次に12年後に大規模修繕をするまで窓ガラスの交換ができず、寒さ、結露に耐えなくてはいけない。それはつらい、と2019年から4年ごとに中規模修繕をすることになりました」と佐々木さん。
2017年からの2年間で貯まった修繕積立金に加え、国と都、区の補助金も活用。サッシメーカーに直接依頼して全窓をカバー工法でアルミ複層サッシに交換したのだが、このやり方なら途中にワケのわからない費用は発生しない。
断熱に関しては2021年に玄関扉をやはりカバー工法で断熱扉にしており、このあたりから住民の間でも中規模修繕という考え方が根づき始めたという。改修で部屋が暖かく、結露もなくなって快適になるのだから、このやり方で良しとする人が増えるのは当然だろう。
その後、2023年には屋上防水、エレベーターの改修という比較的費用の嵩(かさ)まない修繕を実施、2027年には費用のかかる外装の更新、2031年には給排水衛生設備を更新、地下の受水槽を撤去して直接給水方式に切り替える。以降も4年ごとにその時に必要な工事を行っていく予定だという。
「4年ごとにいくら修繕積立金が貯まり、それを優先順位に合わせてどこに使う予定かという資料を管理会社に依頼、適宜相談しながら作ってもらい、住民にわかりやすく説明しています。管理組合とは別に修繕委員会を組織、工事実施2年前に招集、3年間活動してその後1年はお休みという仕組みにして、負担がかかりすぎないようにもしています」
10数年に一度の大規模修繕はその間にどんと落ちた価値を大きく上げるための修繕になり、項目も費用も増える。この時しかやる機会がないからと無駄な工事もまとめてやっておこうとなる。意図せずとも談合の危険が入り込んでくる。
だが、4年に一度なら物件の価値がさほど落ちないうちに次の工事が行われるので価値を維持し続けることができる。10数年マイナスがマイナスのままで劣化が進む物件より、4年ごとにどこかがプラスになり続ける物件のほうが市場価値も落ちない。
実際、立地のせいもあるが、佐々木さんの住んでいるマンションは賃貸に出してもすぐに決まり、不動産価格も購入時から2倍近くまで上昇している。
「手間・総額増」でもメリットの多い中規模修繕
もちろん、いいことばかりではない。佐々木さんのマンションのように4年に一度工事があるのは煩わしいと思う人もいるだろうし、管理組合の仕事、手間も増える。修繕積立金が少ないマンションではなかなか次の工事に必要な額が貯まらないこともありうる。
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