「談合の温床・大規模修繕は時代遅れ?」、無駄な工事で修繕積立金が枯渇、《マンション管理の新発想》資産を守る「中規模修繕」メリットと課題

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それに、そもそも管理会社は建物や設備に関してほとんど知識がない。目の前の建物に今の時点でどのような修繕が必要かが判断できない以上、修繕を担当する会社に「今、修繕が必要です」と言われれば言うなりになるしかない。

管理会社、管理組合と大規模修繕事業者の情報はゼロ百と言ってもよいほど非対称なのである。

加えて今はまだ業界全体がコロナ禍の影響を引きずっている。コロナ禍では大規模修繕を見合わせる管理組合が相次ぎ、制約解除以降に工事が集中。市場が過熱した。

現在はそこに人手不足、建材等の高騰が拍車をかけている。事業者を公募、見積もり取得後に工事の依頼をしても半分は断られるほどの売り手市場になっているという。

無駄な工事までやるから修繕積立金が枯渇

とはいえ、そんな状況下でもマンションの資産価値を維持するためには修繕は必要だ。

「であれば、まずは1回のスパンを15年、できれば17~18年に延ばし、さらに全部を一度にやるのではなく、目の前で必要なものだけを何度かに分けてやる、中規模修繕に切り替えればいいのです」と菅さん。

大規模修繕では足場を架けて工事をするが、足場架設に多額の費用がかかるため、それならばといろいろな修繕をこの機に一度にやろうとなりがち。そしてそこに無駄が生じる。

わかりやすいのは屋上防水。10年保証が付いているが、10年でダメになるというわけではない。

劣化の状況次第では20年近くまでは大丈夫だというが、大規模修繕の際には一緒にやってしまいましょうと提案されることが多い。それに対して反論できる管理組合はほぼなく、プロがそういうのだったらと一緒にということになる。

だが、屋上防水はそもそも足場とは無縁の工事。足場を組むから一緒にという自体がおかしな話なのだが、誰もそれには気づかないまま、工事をやってしまうのである。

一度に多額を支出して修繕積立金が底をつき、値上げを検討せざるをえない状況に陥る。そうならないよう「何度かに分けて修繕したほうが収支バランスがよくなり、資産価値も維持できる」というのが株式会社佐々木設計事務所の佐々木龍郎さんだ。佐々木さんは実際、中規模修繕を実践しているマンションに居住している。

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