糖質制限の権威が語る「心と健康」の深い関係 アドラーは最強の健康法だった!

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――心を変えるとは、具体的にどのように変えるのでしょうか。

それまでの常識にとらわれず、病気と治療について新しい眼で見直すことを、「心を変える」と言っています。

「治さなくてもいい」病気もある

たとえば、アトピーの患者さんには、それが治ると、もっと悪い病気を発症させるケースがあり、中にはアトピーが完治した途端、精神病を発症して、自殺未遂を起こした人もいます。こうしたケースを「治らなくてもいいアトピー」と私は呼びます。

アドラー関連書は多数出ているが、健康書は今回が初めて(撮影:編集部)

この例では、「病気は何が何でも治すべきだ」という常識にとらわれると、真の健康が見えなくなると思うんですよ。患者さんの健康のためには、むしろ治さないほうがいい病気もあるという事実は、心を変えないと気づくことができないんですね。

逆に、心を変えると新しい健康観が見えて、それを実現できると思うのです。

――新しい健康観とはどういうことでしょうか。

私は「健康の意味を自分で決めていい」と思っています。すると、100人いれば、100とおりのそれぞれに違った健康観があることになります。人によっては、「病気があっても健康に生きることは可能」という健康観もありうるのです。

たとえば、先ほども申し上げたとおり私は糖尿病ですが、糖質制限食を実行していて血糖値は正常ですし、合併症のリスクも正常な人とほぼ同じです。現実に、私は病気なのに、健康になれたわけです。

同じように、どんな重病の人でも、心を変えれば、健康になれる道は必ずあります。

心を変えることで、自分自身が真に求める健康とは何なのかがわかるんですね。自分の求める健康がわかってこそ、楽しく元気に生きていくことができるのだと思うんです。

つまり、新しい健康観とは、「自分が本当に求める健康」のことなのです。

今度の本を読んだことがきっかけになって、多くの人が心を変えて、本当に自分らしい健康を手に入れる。ぜひ、そうなってほしいと、大いに期待しているんですよ。

(撮影:今井 康一)

江部 康二 高雄病院理事長

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えべ こうじ / Koji Ebe

内科医、漢方医。高雄病院理事長、日本糖質制限医療推進協会理事長、江部診療所所長。1950年生まれ。1974年京都大学医学部卒業。1978年から高雄病院に勤務。漢方療法、絶食療法、食養生、心理療法なども取り入れ、独自の臨床活動を行ってきた。1999年高雄病院に糖質制限食を導入し、2001年から本格的に取り組む。2002年に自らも糖尿病であると気づいて以来、さらに研究に力を注ぎ、「糖質制限食」の体系を確立。自身の糖尿病も克服する。

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