つくづくトランプさんという人は、自分の間違いを認めるようなことはないけれども、軌道修正は意外と柔軟だ。何しろビジネスマンとして何度も破産し、政治家としては落選も経験し、幾多のスキャンダルを乗り越えて大統領へのリカバリーを果たした人だ。過ちを正すに憚ることなかれ。お陰で日米の株価は一時いきなり上昇に転じた。
この一連の経緯から、投資家は何を学ぶべきだろうか。「トランプさんはやっぱり株価を気にする人だった」と安心する向きもあるだろう。ただし筆者は、むしろ「アメリカの政策がこれだけブレ幅が大きいのでは、今後の投資戦略は大変だぞ」と感じている。年初の頃のように、「今年も資産運用はアメリカだけ見てればいいよねえ」といった呑気な雰囲気ではなくなった。とりあえずは「短期楽観、長期悲観」といったところか。
「MAGA」として再び戻りたい時代は19世紀末?
それにしてもトランプさん、なぜここまで関税にこだわるのか。「相互関税」の導入を公表したときの演説ではこんなことを言っていた。
「アメリカは1789年から1913年にかけ、関税に支えられた。最も豊かだった期間だ。カネが腐るほどあった。しかし、信じられないことに、外国ではなく国民を財源とする所得税を1913年に設けた。そして繁栄は1929年の大恐慌によって幕を閉じた。われわれはより賢くなり、再び裕福になる。どんな国よりも裕福になれる。信じられないほどに」
この発言は面白い。1月20日の大統領就任演説では、トランプさんは第25代ウィリアム・マッキンリー大統領(任期1897年~1901年)を持ち上げ、バラク・オバマ大統領が「デナリ山」に変えたアラスカの山の名前を「マウント・マッキンリー」に戻すと宣言している。
トランプさんが頻繁に使う“Make America Great Again”という言葉の中で、アメリカが再び戻りたいと願う時代とはいつのことなのか。てっきり1950年代くらいかと思っていたら、トランプさんにとっては19世紀末であるらしい。日本で言えば明治時代、『坂の上の雲』の頃である。
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