そもそも合衆国の独立は、植民地のお茶に対して宗主国である英国が課した関税が発端であった。それだけにアメリカの歴史において、関税が持つ意味は重い。例えば、『スターウォーズ』シリーズのエピソード1「ファントム・メナス」は、惑星間貿易における関税の揉めごとが物語の発端となっている。いかにも「お里が知れる」感じではないか。
関税で国家財政を賄えたのは単に歳出が少なかったから
ただし、19世紀末までのアメリカは極度に「小さな政府」であった。州政府の権限が強く、大統領の仕事もまだ多くなかった。連邦政府が関税中心で財政を賄うことができたのは、当時のアメリカが豊かだったからというよりも、単に歳出が少なかったからである。
20世紀に入ると、アメリカは2度の世界大戦を戦うようになり、そうなると莫大な軍事費が必要になってくる。歳入源として、所得税や法人税が重きをなすようになっていく。さらにフランクリン・ルーズベルト大統領(任期:1933年~1945年)以降は、社会保障税制も始まることになる。今さら関税中心の税制に戻ることは、「夢のまた夢」なのである。
さらに言えば、19世紀までの貿易は高級品が中心であった。どうせ買い手は金持ちなのだから、高関税政策が許された。今のように庶民が日常的に使うような商品を、海外から大量生産で安く輸入するなどという発想はなかったのである。
ちなみに、世界大恐慌を増幅させたスムート・ホーリー法が導入された1930年、アメリカのGDPに占める輸入額は3%程度であったと推計されている。それが今日は対GDP比で11%程度を占めることになる。
つまり今の時代に高関税政策を導入すると、インフレが生じて庶民が苦しむことになる。「それでは『MAGA!』(アメリカを再び偉大に!)とはならないんじゃないか」と思うのだが、何とか軌道修正してもらうことはできないだろうか(本編はここで終了です。この後は競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)。
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