真面目な話、これではアメリカで売っている中国製の「iPhone」が今まで1000ドルだったとして、それがいきなり2000ドル以上になってしまう計算になる。
ところが日本など外国では、普通に1000ドル程度で売っている。これだけ価格差ができてしまうと、「日本に行ってiPhoneを買おうツアー」が成立するんじゃないだろうか。こんな風に関税は市場メカニズムを歪めてしまうので、今後は密輸なんかも増えることになりそうだ。
なぜこんな複雑なことになってしまったのか。トランプ政権内には、関税政策をめぐって過激な意見を持つ「MAGA派」と、穏健路線を求める「共和党主流派」の対立がある。
ハワード・ラトニック商務長官などの実務家が、地道に商品別関税の品目を拡大する一方で、ピーター・ナヴァロ上級顧問などの急進派がフェンタニル関税、そして相互関税の導入を急いだのであろう。
「国際緊急経済権限法」を根拠にするのは「やや無理筋」
思うに関税導入の理由付けとして、IEEPAを使うのはやや無理筋の感がある。もともとが非常事態用の法律であるから、「フェンタニルの流入を防ぐため」ならともかく、「貿易赤字が危機的な状態だから」というのは理屈として通りにくい。相互関税に対しては、行政訴訟が起こされる可能性があるだろう。
しかも相互関税を導入した結果、全世界の株式市場は大荒れになってしまった。トランプさんも当初は、「これは経済革命だ。われわれは勝利する」と突っ張っていたけれども、動揺は次第に議会内にも広がり、共和党支持者の間でも否定的な受け止めが少なくなかった。
4月6日には、自由貿易を求めるイーロン・マスク氏とピーター・ナヴァロ氏が大喧嘩を始める始末。今後のトランプ政権内部では、スコット・ベッセント財務長官を筆頭とする穏健派が力を得て、しばし政策運営は安定化するのではないだろうか。
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