お金と病気で苦労続き…ついに自殺未遂まで! 「ドン底」だった82歳を救った意外なモノ。「年金たった3万・ほぼ寝たきり」からの大逆転劇

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千里さんは、当時の父への率直な思いを語る。

「父はいつもパジャマ姿で、ベッドでほぼ寝たきりの状態。ネガティブな発言ばかりの父を見るのがとても嫌で、両親が住む家から車で10分ほどの距離に住んでいながら、あまり寄り付きませんでした。

父が家出したり、感情のコントロールがきかなくなって暴言を吐いたりするたびに呼び出されて、うんざり……。『早く死ねばいいのに』って本気で思っていたほどです」

絶望の淵から救ったのは一台のミシン

「私はきょうだいの中で一番、薄情者やったと思います」と言い切る千里さんだが、心の中ではずっと父を気にかけ、どうしたら生きる気力を取り戻してくれるか、考えあぐねていた。

ある日のこと。父に壊れたミシンの修理をお願いした。それは、「長年培ってきた父の職人魂がよみがえり、少しでも元気になってくれたら」との望みもあったからだ。

斉藤さんはベッドから立ち上がり、ミシンをあっという間に修理。試し縫いで、布が瞬く間に縫い上げられていく様に感心した斉藤さんは、「何か縫いたい」と言い出した。そこで「これなら簡単に作れるんとちゃう?」と差し出したのが、千里さんが自作した聖書カバーだった。

斉藤さんはすぐさまカバーを分解し、仕組みをチェック。まるで機械を組み立てるかのように自分で設計図を作り、聖書カバーを完成させたのだ。

「もっと作りたいなぁ」と意欲を見せる斉藤さんに、千里さんの家族4人分の聖書カバーをお願いすると、3日後には18枚ものカバーが。千里さんは「こんなに作ってどうするの!?」と呆れつつも、「今まで寝たきりだった父にこんな力が残っていたのか!」と感動を覚えた。

聖書カバーの次は、コースター、ポーチ、財布まで。湧き上がる情熱のまま作り続けるうちに、メキメキとミシンの腕を上げていく斉藤さんに、千里さんは「大好きながま口バッグを作ってほしい」とリクエストした。

手始めに「小さながま口財布」からチャレンジすると、最初は形のゆがんだとんでもない仕上がりに。千里さんは思わず「下手!」と言い放った。

「あんときは悔しかったね。負けず嫌いやから、できるまでやってやろうと思ったよ」(斉藤さん)

ミシン
縫うのが楽しくて、毎朝5時からミシンをかけていた斉藤さん。家族に「うるさくて寝られない!」と苦情が入るほど没頭した(写真:筆者撮影)

ますますミシンに没頭する斉藤さんだったが、生地や金具などの材料費はかかる一方。そこでお金のない父に代わり、娘たち3人で5万円ずつ出し合い、計15万円を材料費として投資した。

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