「武力統一」を記した台湾の中国人妻はなぜ台湾から強制退去させられたのか、台湾内部の根深い対立と言論の自由の問題

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どちらが正しく、どちらが間違っているということは、もちろん言えない。台湾で独立を唱えるにしろ統一を唱えるにしろ、それぞれの台湾の人の発言や考え方には、それぞれの背景がある。

ただ、「亜亜」騒動はもともと台湾社会に存在する亀裂をさらに深めることになったことは間違いない。そこには、レイシズム的な言説が多く含まれており、台湾社会のモラルの低下が見られる。

中国大陸に関する言説でバッシングの対象となったのは「陸配」だけではない。「頼17条」では台湾の芸能人の発言にも警告を発している。台湾出身の芸能人が中国大陸を「自分の祖国」だと発言したことでバッシングを受けたケースは枚挙にいとまがない。

外省人と本省人の思い

また、台北市の名門女子高の先生である区桂芝さんがテレビ局CCTV(中国中央電視台)の取材を受けた際に「頼17条」を批判し、中国大陸を「海外の敵対勢力」とみなすべきではない、「台湾は中国のものだ」「正々堂々とした中国人だ」などと発言したところ、それを見た市民が教育部(文部教育省に相当)に告発し騒ぎにもなっている。

区桂芝さんは、いわゆる戦後に台湾に渡ってきた中国大陸出身者とその子孫を指す「外省人」だ。台湾には大きく分けて戦前からの台湾住民とその子孫である「本省人」と外省人がいるが、まだ大陸に親戚などがいる外省人からすれば中国大陸を「海外の敵対勢力」と言われることは、とても受け入れられないのは自然なことだろう。

移民署は2025年1~3月まで、ネット上で中国大陸との「武統」「統一」などを主張したとして一般市民やインフルエンサー、華僑、そして外国人の30人に対して事情聴取を行った。

台湾では、「中国」という用語、あるいは中国に関する物事は、中華人民共和国あるいは中国共産党と同意義に捉えられ、何かあると容易に炎上を引き起こし、集団ヒステリー的な様相を見せる。

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