「武力統一」を記した台湾の中国人妻はなぜ台湾から強制退去させられたのか、台湾内部の根深い対立と言論の自由の問題

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頼清徳総統は「100%の言論の自由は、決して自由を利用して自由を消滅させることではない。自由・人権を追求する前提は、つまり国家に主権があるということだ」という。

国家主権を脅かす言論は制限することができ、今回の亜亜さんの発言は台湾の自由・民主体制に対する挑戦でもあり、民主主義と言論の自由のレッドラインを超えている、という考えだ。このような考えは、他の民進党政権の閣僚などからも相次いで出されている。

「頼17条」をきっかけに、台湾での中国大陸に対する雰囲気が変わった。こうした政治的な雰囲気の中で、「亜亜」騒動が発生したのである。中国大陸に対する敵意を強める頼清徳政権の政策とそれに従った世論の動向が相まって、騒動はエスカレートした。

民進党は「100%言論の自由」を掲げていたのに…

それと同時に、亜亜さんの居留権剥奪に対して「言論の自由を守る」という観点から大きな批判も起きた。そのうち、台湾の最高研究機関の科学アカデミーに当たる中央研究院所属の75人の学者が、労働者団体や芸能界関係者とともに「台湾の民主法治と平和安全を守る」と題する共同声明を発表した。

この声明文は、「頼清徳総統が就任して以来、中国大陸を絶えず悪魔化し、異なる意見を持つ者を中国大陸の同調者として抑圧し、台湾社会の対立を激化させ、ポピュリズム的な手法によって支持者の結束力を高めている」などと批判した。そして、その結果、台湾における言論の自由の空間が急速に縮小していると指摘した。

亜亜さんの言説の内容への賛否はともかく、かつての戒厳令時代を経て民主化を勝ち取った歴史を持つ台湾の多くの人たちにとって、民進党はその大きな一翼を担った勢力だった。

当時の民進党は、「100%の言論の自由」を主張しており、これが民主化を大きく進める原動力になったにもかかわらず、いま政権を獲得したら逆に言論を制限しようとすることに、強い抵抗感を感じている。

この共同声明はすぐさま炎上し、激しい批判にさらされた。亜亜さんの台湾退去に対して、大きく分けると世論は賛成2に対して反対1。中国大陸との関係は台湾にとって非常に敏感なテーマであり、統一を主張する亜亜さんの言説は、当然、多くの台湾の人たちの感情を逆なでする。

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