「武力統一」を記した台湾の中国人妻はなぜ台湾から強制退去させられたのか、台湾内部の根深い対立と言論の自由の問題

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実際に「亜亜在台湾」を見てみると、「早く『武統』してくれ」「朝起きて五星紅旗(中華人民共和国国旗)がいっぱい立っていたら嬉しい」といった話だ。過激に見えるが、このような内容は中国大陸の庶民からよく聞く話でごくありふれたもの。実際に、民進党政権を批判する中国大陸当局のプロパガンダでもない内容だ。

筆者は、日本在住の中国人女性から「台湾に侵攻するなら私が先頭に立って戦う」と聞かされてとても驚いたことがある。今回の「亜亜」さんの発言よりも、彼らはもっと過激な感情がある。

それは台湾に対するものというよりは、中国大陸から離れようとする民進党政権への強い怒りから来ている。亜亜さんのフォロワーはほとんど中国大陸の人たちだ。その心をつかもうとするなら、当然、その感情に合わせることになる。

軽蔑と対立を深める民進党政権への怒り

中国大陸との関係改善に努めた国民党の馬英九政権時代(2008~2016年)には、中国大陸の人たちの台湾に対する感情は良好だった。観光が解禁され、好奇心もあって大勢の人が中国大陸から台湾を訪れた。それが急転直下したのは、2016年に台湾の主体性を強調し、中国大陸に批判的な民進党の蔡英文政権が誕生して以降だ。

さらに「陸配」の女性たちは台湾で、かねてより差別にさらされている。当初、中国大陸の女性が台湾男性と結婚して台湾にやってきたのは経済的な理由が大部分だった。まだ台湾と中国大陸との経済格差が大きかった時代だ。

台湾の人たちは、そうした「陸配」を軽蔑した。中国大陸での経済発展でそうした状況は変化しているが、今も差別は続いている。

中国大陸出身の彼女たちにとって、台湾と中国大陸はもともと「1つの中国」である。差別を受け続ける彼女たちにとって、心のよりどころは中国大陸だ。

プライドの根拠は「中国人」であるということだ。台湾を生活の場とする彼女たちが戦争を望むとは考えにくい。しかし、台湾と中国大陸の統一を願う気持ちは強いものがある。中国大陸への批判を繰り返す民進党政権にそんな彼女たちはどう思うだろうか。

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