「いつか使うかも」「思い出の品だから」モノを捨てられない人に潜む《ためこみ症》という心の病 片付け業者よりも必要な対策とは?

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ためこんだモノが自宅の敷地からはみ出せば、近隣とトラブルになりかねない。モノの落下・崩落による事故や、失火のおそれもある。

「コレクション」との違いは?

とはいえ、ほかの人からすれば価値のないモノを、自分なりのテーマで集めている人は珍しくない。後世、それが貴重なコレクションと評価されることもあり得る。そうした「コレクター(収集家)」と、どう違うのだろうか。

「生活空間や生活機能に影響があるかどうかが、1つのポイント」と中尾さんは言う。

「収集家は専用の棚を作ったり、整然と並べたりしていますが、ためこみ症の人の自宅は、モノがあふれてしまっている。例えば、寝室が寝室の、キッチンがキッチンの機能を果たせていません。その結果、生活に大きな支障をきたしています」(中尾さん)

あらためて整理すると、ためこみ症は3つの特徴がある。

①モノを大量に集める。

②それらを整理整頓できない。

③モノへの愛着が強く、捨てられない。

海外の複数の研究から、ためこみ症の有病率は人口の2~6%と見られる。日本での調査はまだないが、発症に国や文化の違いはないとされており、有病率は海外と同程度だと中尾さんは見ている。

問題は、こうしたためこみ症が病気と認識されず、単に“だらしない人”と見られてしまう点だ。本人も、病気であるという意識に乏しいようだ。

「ためこみ症に該当する人のうち、実際に医療機関を受診する人は100人に1人もいないという海外の研究もあります。そのためか、医療者にも十分に認知されておらず、精神科医でさえ、『そんな病気あったのか』と驚くことがあります」と中尾さん。

認知症や注意欠如・多動症(ADHD)といった発達障害など、脳やメンタル系の病気の症状の1つとしてためこみが表れたり、ためこみ症が合併したりすることもある。このため、ためこみがどの病気によるのか、判別が難しい(ほかの病気なら、その治療が必要)という点も課題となっている。

中尾さんが勤める九州大学病院では、精神科神経科に「行動療法専門外来」を設けて、ためこみ症の患者を診ている。

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