ウクライナ戦争の停戦交渉の裏側(上) アメリカは「ウクライナの同盟国」から「ロシアのための調停国」に変わった

✎ 1〜 ✎ 188 ✎ 189 ✎ 190 ✎ 191
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ウクライナの新聞『The Kyiv Independent』は3月27日に掲載した記事「Trump looks at Putin as Friend」で、トランプ大統領の研究家マーティ・ラッツ氏の発言を紹介している。

「トランプ大統領はウクライナ戦争に関してただ取引を望んでいるだけだ」「トランプ大統領は世界を白と黒でみており、グレーは存在しない。彼はプーチンを友人とみている。プーチンを事実上、彼の個人的利益、つまりアメリカの戦略的な利益ではなく、トランプ大統領の個人的な利益に同調する人物とみなしている」「アメリカはロシアに対して大きな経済力を持っているが、経済制裁でトランプ大統領はプーチンに譲歩しようとしている」。

ウクライナ戦争の調停過程を詳細にチェックすると、ラッツ氏が調停以前に指摘した通りに事態が進んでいることがわかる。

「30日間の停戦協定案」の具体的な内容

ゼレンスキー大統領にとって、一時的とはいえ武器援助と情報共有の中止は、想定外だったかもしれない。少なくとも現状でアメリカの武器供与が途絶えれば、戦況に深刻な影響が出るのは間違いない。

3月11日、サウジアラビアのジッダでアメリカ、ウクライナ代表団が8時間にわたって協議し、アメリカが提案した「30日間の停戦協定案」が合意された。両国首脳は電話で会談を行い、会談後、トランプ大統領はSNSに「非常に生産的な会談であった」と書き、ゼレンスキー大統領も「トランプ大統領との会談は良好であった」と「X」に投稿し、アメリカ案を無条件で受け入れると表明。武器援助と情報提供を人質に取られたウクライナに選択の余地はなかった。

ホワイトハウスが発表した共同声明のポイントは次の通りである。

①「ウクライナは即刻かつ暫定的な30日間の停戦を受け入れる用意があると表明した。この停戦期間の日数は関係国の合意によって延長することができる。この合意はロシア連邦による受諾と同時の実施を条件とする」

②「アメリカは平和を達成するカギは互恵主義であるとロシアに伝える。アメリカは、諜報情報の共有の停止を解除し、ウクライナへの安全保障支援を再開する」「代表団は和平プロセスの一環として、特に上記の停戦期間中に、捕虜交換、民間人の拘束者の解放、強制的にウクライナに移送された子供の帰国など人道的救済活動についても話し合う」

③「両国代表はそれぞれ交渉チームを指名し、ウクライナの長期的な安全保障を提供する永続的な平和に向けた交渉を直ちに開始することで合意した。アメリカは、これらの具体的な提案についてロシアと協議することを約束した。ウクライナ代表は、欧州のパートナーも平和プロセスに関与すべきだと繰り返し表明した」

④「両国の大統領は、ウクライナの経済を拡大し、ウクライナの長期的な繁栄と安全を保証するために、ウクライナの重要な鉱物資源を開発するための包括的な協定をできるだけ早く締結する」

以上のように「30日間の停戦案」には具体的な停戦条件が含まれていない。それはトランプ大統領とプーチン大統領の電話会談で決まる。つまり、ゼレンスキー大統領はウクライナの命運をトランプ大統領に委ねたことになる。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事