ロシアのクルスク州に攻め入ったウクライナの大胆な奇襲作戦は、戦況を一変させるものではない。ロシアとウクライナのいずれも軍事面で絶対的な勝利を成し遂げられる立場にはなく、この戦争は戦場ではなく、交渉のテーブルで決着することになろう。
その交渉のテーブルでこそ、クルスク奇襲はウクライナに優位性をもたらしうるものとなる。ロシアに越境攻撃を仕掛けられるという事実を効果的に示したことで、今後の交渉におけるウクライナの立場は強まった。米国とその同盟国は新たに手にしたこのテコをうまく活用し、停戦と外交による戦争終結への道筋をウクライナとともに描くべきだ。
ウクライナがクルスク州に攻め入る前の段階で、外交的解決のチャンスはすでに開かれていた。ウクライナのゼレンスキー大統領は、占領された領土を完全に取り返すまでロシアとの交渉はありえないという立場を貫いてきた。が、この夏には外交的解決に前向きな姿勢を示し、「できるだけ早期に」戦争を終わらせる交渉を行う必要性を力説するようになった。
この記事は有料会員限定です。
東洋経済オンライン有料会員にご登録頂くと、週刊東洋経済のバックナンバーやオリジナル記事などが読み放題でご利用頂けます。
- 週刊東洋経済のバックナンバー(PDF版)約1,000冊が読み放題
- 東洋経済のオリジナル記事1,000本以上が読み放題
- おすすめ情報をメルマガでお届け
- 限定セミナーにご招待