停戦案の合意を受け、トランプ大統領は武器援助と情報共有を停止する措置を直ちに解除した。そしてルビオ国務長官は「私たちはウクライナの永続的な平和の回復に一歩近づいた。ボールは今、ロシアのコートにある」と、プーチン大統領に合意を迫った。
対するロシアは3月12日、クレムリンのペスコフ報道官が「停戦案を受け入れるかどうかはアメリカによる説明を聞いてからだ」と記者団に語っている。
ロシアはウクライナがのめない条件を列挙した
しかし、当初からプーチン大統領が停戦案を受け入れるのは難しいと予想されていた。ゼレンスキー大統領の求める「全面停戦」はロシアにとってメリットがあるとは思われなかったからだ。
ただ、停戦案の受け入れを拒否すれば、ロシアは平和を望んでいないと批判される可能性もある。3月18日、トランプ大統領とプーチン大統領の90分に及ぶ電話会談が行われ、同日、クレムリンは電話会談に関する声明を発表した。そのポイントは、以下の通りである。
①トランプ大統領が紛争の平和的解決策を見出すという決意を確認し、アメリカと協力して「ロシア大統領は包括的で信頼でき、永続的かつ危機の根源を取り除くというロシアの基本的な必要性とロシアの安全保障上の利益を考慮し、可能な解決策を策定する用意がある」。「危機の本源と安全保障上の利益」が何を意味するかが重要で、専門家はウクライナのNATO(北大西洋条約機構)加盟などの動きを阻止することと解釈している。
②停戦を効果あるものにするために、プーチン大統領は「ウクライナの兵員増強とウクライナ軍の再軍備を停止する」ことを要求している。ウクライナが絶対に受け入れることができない条件である。
③「ウクライナに対する外国の武器提供と諜報情報の提供を完全に中止すること」も要求している。これもウクライナがのめない条件である。すなわちウクライナの安全保障の確保に対して「ノー」と言っているのである。
④「トランプ大統領はエネルギー・インフラに対する攻撃を30日間、相互で停止する提案を行った。プーチン大統領は提案に好意的に反応し、ロシア軍に攻撃停止の命令を出した」。プーチン大統領は「部分的停戦」を主張したのである。ロシアにとってエネルギー施設への攻撃を停止することは大きな意味がある。ウクライナはドローンや無人機、ロケット弾を使ってロシアの石油精製所を頻繁に攻撃している。それがロシアの最大の収入源である石油輸出の足かせになりつつある。30日間の休戦は、ロシアが石油精製所の修復を行うには十分な時間である。ウクライナも自国の発電・送電施設への攻撃が中断されるのは施設の修復と市民生活の安定にとってプラスである。ただ、どちらがより大きな恩恵に浴するかと言えばロシアだろう。
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