これらの対応を欧州諸国の首脳やメディアは批判したが、トランプ政権は意に介さない。
3月3日、バンス副大統領は『Fox News』のインタビューで「ウクライナが本当の安全保障を望むなら、またプーチンが再びウクライナを侵略しないようにしたいのなら、最善の方法はアメリカに経済的利益をもたらすことだ」と、極めて露骨に語っている。さらに「フランスが今、ドイツ語を話さなくていいのはアメリカのおかげだ」と欧州諸国の感情を逆なでする発言までしている。
3月19日には、トランプ大統領がゼレンスキー大統領との電話会談で「原子力発電所をアメリカが所有することがウクライナのエネルギー安保の最大の支援になる」と発言したとホワイトハウスが発表している。ゼレンスキー大統領は「発電所は国有財産であり、ウクライナ人のものだ」と反発、原発の所有権についてトランプ大統領と話したことはないと、トランプ発言を否定している。
中国の新帝国主義外交と同じだ
援助と引き換えに利権を得るというのは、中国が発展途上国で行っている「新帝国主義外交」と変わるところはない。
ウクライナ戦争を小国が独立と領土保全のために大国と戦っている戦争ではなく、アメリカの納税者に負担を強いている戦争だと考えているトランプ大統領にとって、ウクライナ戦争の調停はアメリカに利益をもたらす「ビジネス機会」にすぎない。
トランプ大統領は、イスラエル・ハマス戦争の休戦によってアメリカはガザ地区の利権を得て、大リゾート地を作ると発言しているが、その発想は同じ根から出てきたものだ(もう1つ、トランプ大統領が欲しいものがあるとすれば、「平和を実現した大統領」という栄誉である)。
大統領執務室の一件についてゼレンスキー大統領は、前述の『Time』誌のインタビューで「アメリカはロシアに自分たちの立場は中立であることを示したかったのだと思う。アメリカはウクライナの味方ではない」と語っている。さらに「私たちは、ウクライナ側に立てないのなら、せめて中立でいてほしいとトランプ大統領に伝えた」という。
だが、トランプ大統領は中立どころか、明らかに「親ロシア」だ。
ゼレンスキー大統領は、「ロシアは情報を通じてホワイトハウスのチームの一部に影響を与えていると思う」と語っているが、トランプ大統領とプーチン大統領の関係はもっと根が深い。第1次トランプ政権時、トランプ大統領を支えるキリスト教徒保守派のエバンジェリカル(福音派)や極右勢力はプーチン大統領に接近し、お互いに親近感を抱いている。
『Washington Post』は3月27日付の記事「Zelensky and Trump may be doing better, but tough issues lie head」で、トランプ政権とプーチン大統領の良好な関係を示すエピソードを紹介している。
ロシアとの交渉も担当するウィトコフ中東担当特使は、「トランプ候補の暗殺未遂時、プーチン大統領は教会に行き、神父に会って、トランプの安全を祈ったと本人から聞いた」と語っている。さらにプーチン大統領がトランプ大統領の肖像画を描かせ、ホワイトハウスに持って帰るように伝えた。「トランプ大統領が肖像画に感動した」という。さらにウィトコフ特使は「私はプーチンを悪者とは見ていない」と評価している。
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