「4年で100店舗以上が閉店」「いきなりステーキ運営も迷走だった」幸楽苑。大量閉店を経て、”徐々に復調”してきているワケ

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ターゲットをいかに認識するか

一方、近年の幸楽苑が「安くておいしい」価値を認識したように、明確にその店に魅力を感じる人をターゲットにして施策を進める店は、他店でも強い。

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幸楽苑がそうしたように値下げ……で思い出したのは、ファミレス・ガストのことだ。ガストは2023年に一部メニューを値下げ、さらに今年2月には税込1000円前後で3品のメニューが頼める「ガストフィットメニュー」を始め、手頃感にこだわりを見せる。

ファミレス業界はここ数年徐々に全体店舗数が減ってきており、市場規模が天井を迎えつつある。しかしそんな中にあって、ガストはこうした低価格戦略で過去最高益を達成している。

結局のところ、それぞれのブランドの顧客に対して、彼らを徹底的に満足させる施策を取れている店が強いのだ。幸楽苑もまた、こうした方向に舵を切り直したことで、徐々に復活しているのではないか。

食の趣味嗜好が複雑化し、さまざまな選択肢が生まれている現在。その店に魅力を感じるターゲットを認識し、そこに合わせた施策を的確に打てるかが非常に重要になっている。

また、顧客層の拡大を図るときも、既存顧客の好みからあまりにも離れないように慎重に施策を打つことが求められている。

その点で、これまでになく、飲食店の施策は難しくなっているといえる。幸楽苑の低迷からの好調という流れは、こうした近年の外食産業におけるターゲットと施策との難しい関係を表しているようにも感じるのだ。

【もっと読む】「丸亀製麺」「コナズ珈琲」が絶好調のなか”大失速”の兄弟ラーメン店「ずんどう屋」。コロナ後に積極出店も減益、その実態とは? では、急失速しているラーメン店「ずんどう屋」の実態について、チェーンストア研究家の谷頭和希氏が詳細に解説している。
谷頭 和希 都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家

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たにがしら・かずき / Kazuki Tanigashira

都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家。1997年生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業、早稲田大学教育学術院国語教育専攻修士課程修了。「ゲンロン 佐々木敦 批評再生塾 第三期」に参加し宇川直宏賞を受賞。「東洋経済オンラインアワード2024」でMVPを受賞。著作に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』 (集英社新書)、『ニセコ化するニッポン』(KADOKAWA)、『ブックオフから考える 「なんとなく」から生まれた文化のインフラ』(青弓社)がある。テレビ・動画出演は『ABEMA Prime』『めざまし8』など。

X:@impro_gashira

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