「4年で100店舗以上が閉店」「いきなりステーキ運営も迷走だった」幸楽苑。大量閉店を経て、”徐々に復調”してきているワケ
こうした既存路線の「深化」と、それまでの店の方向性から逸脱しすぎない新規事業の「探索」に成功したのが、幸楽苑だといえるかもしれない。
急激すぎる市場開拓は危険?
ところで、このような幸楽苑の動きは他の企業について考える際も有用なヒントをくれる。
例えば、昇氏時代に見られたような新規顧客層や新規事業の開拓が既存のブランドイメージと反してうまくいかないのは、現在の吉野家の姿を彷彿とさせる。
同社は、BSE(牛海綿状脳症)問題のトラウマなどから「牛丼一本足打法」からの脱却を図ろうとしている。実際、店舗面では既存店舗にカフェなどを併設して、ファミリー向けの店舗を作るなどしているし、業態としてはから揚げやカルビ丼、ラーメン屋などにも手を広げている。

同社の決算資料を見ると「牛丼に次ぐ柱」が多すぎて、結局何に注力したいのかわからない。吉野家の新メニューにも、迷走は見える。昨年はダチョウを使ったオーストリッチ丼なども話題を呼んだが、それが吉野家という大企業を支える柱になるかは怪しいし、なにより吉野家を訪れる消費者にウケるとは思えない。
事実、吉野家の業績は前年同期比で下がっていて、2025年2月期第3四半期の決算での、吉野家単体の営業利益は1億6200万円の減益となっている(利益は57億900万円)。
【2025年4月7日16時5分追記】初出時、決算の数字に誤りがあったため、上記のように修正しました。
もともと吉野家といえばシングル男性が牛丼を食べるというイメージが根強い。もちろん、それだけでは今後シェアを拡大できないが、それにしても既存ブランドからの転換が急すぎた。それが、このところの経営不振にもつながっている気がする。
もちろん顧客の拡大などは必要だが、それを行うにしても既存の顧客層との連続性が重要になってくるのだ。
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