「ナスD」打ち切りの裏側…経費不正とパワハラで幹部を処分、視聴者が知るべき人気番組の過酷な現場
今回の件に関しては具体的な事情を知らないので何とも言えないのだが、一般論としては、現場の最前線で戦っているテレビマンが、その手のトラブルを起こしてしまうのは珍しいことではないと思う。なぜなら、個人的にはテレビの制作現場は一般的な常識の通じない過酷な世界であるという認識があるからだ。
私自身もテレビ番組の制作会社で働いていたことがある。テレビ業界全体を大海原にたとえるなら、私は足がつく程度の浅瀬でちゃぷちゃぷ水遊びをしていたぐらいの経験しかないが、それでもそれなりに過酷な労働環境だったことは間違いない。
いわゆる「休めない、寝られない」というストレスもあるが、それよりも厳しかったのは「限られた時間で面白いものを作らなければいけない」「絶対に放送日に間に合わせなければいけない」という精神的な重圧である。そして、一般的には、ヒットしている番組やカリスマ的なテレビマンが仕切っている番組の現場ほど、その重圧は強いものになる。
改善はされても厳しい制作の現場
テレビ業界は、視聴率という数字で結果が判断される厳しい世界だ。しかも、制作のための時間や人員などは限られている。「最近はテレビの労働環境もだいぶ改善された」などと言われることがあるが、個人的にはその手の話を文字通り真に受けてはいない。
もちろん昔より改善されているのは間違いないのだろうが、テレビ番組の基本的な制作フローに劇的な変化があるわけではない。やるべきことの分量はそれほど変わっていない。限られた時間で面白いものを作るために、大勢のスタッフが血反吐を吐きながら全力で仕事をする。それ自体には大きな変化はないはずだ。
数年前に某テレビ局のディレクターの方にインタビュー取材をしたとき、ご本人が語られていた「ブラック労働」的なエピソードを記事に入れていたところ、原稿チェックの段階でその部分がすべて削られてしまったことがあった。「働き方改革」が進んだとはいえ、いまだに過酷な労働環境があることは事実なのだろう。
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