「最寄り駅は遠い、利用者も多い…でも廃止だ!」 23区でも登場した「バス廃止」の路線。バス会社を襲う「リエッセ不足問題」の複雑な事情

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リエッセを購入した武蔵野市が開業したコミュニティバス「ムーバス」は、大型バスが間違っても入れないような吉祥寺の路地裏にどんどん入り、これまで表通りのバス停に行くのも億劫だった高齢者や、子育て世代の主婦など、新規の利用者を掘り起こした。赤字前提のはずが初年度から利益を出すほどの成功を収める。

ムーバスの成功事例はあっという間に知られ、各地でコミュニティバス開業・リエッセ購入が相次ぐ。こうしてリエッセは、あっという間に小型路線バスの市場を制覇してしまったのだ。

ムーバス
リエッセ開発に携わった武蔵野市「ムーバス」も、早期にポンチョに移行した(筆者撮影)

リエッセ一強の潮目が変わったのは、2000年に制定された「交通バリアフリー法」や、その後のガイドライン強化がきっかけだ。

同法では「路線バスの乗降口は地上から床高65cm以下」、ノンステップバスを製造する必要が生じたものの、リエッセは2段のステップがあり、条件のクリアが難しかった。

ここで、バリアフリー対応と最新の排ガス基準クリアを前提に設計されていた「ポンチョ」が注目を浴びる。乗降口の床高31cmと圧倒的に乗り降りがラクで、2006年の新モデル発売後は小型バスの需要を一手に引き受けるようになる。

ただバリアフリー対応のために、エンジンルームの配置転換など大幅に設計変更した結果、車軸は車体の前端・後端につくことになった。また、乗降口は低い位置にあるものの後部座席には段差が生じ、「小回り・収容能力はポンチョ<リエッセ」という、西武バスが泉38で抱えたものと同様の課題が生じた。

バリアフリー対応の適用除外もできなくはないが、よほどの事情がある路線以外、そこまでしてリエッセを選ぶ理由がない。

のちに日野自動車は、小型バスのラインナップをポンチョに集約し、リエッセは2011年に製造を終了する。ほか、リエッセ同様に小回りが利いた三菱ふそう「エアロミディMJ/ME」も生産を終了しており、現時点で同クラスの選択肢は、ポンチョや「リエッセⅡ」(性能は引き継いでいない)、三菱ふそう「ローザ」の路線バス仕様、BYD(中国・比亜迪汽車)の「J6」などしかない。

こういった「小回り」「収容能力」を兼ね備えた車両を新規開発できればいいのだが、バス車両の製造を担う日野自動車・三菱ふそう等にとってはトラックのほうが上得意であり、ヒットが見込めない路線バス車両を新規開発するメリットがない。リエッセの性能を兼ね備えた車種が新規発売される可能性は低いだろう。

結構あった「リエッセしか入れないバス路線」置き換えの行方は?

パリポリくんバス
草加市「パリポリくんバス」リエッセ車両。既に引退済み(筆者撮影)
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