山崎元が「未公開原稿」で伝えようとしていた「人生100年時代」の"まやかし"と「老後2000万円」問題の"本質"

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この問題では、当時の麻生太郎金融担当大臣の対応が絶妙に悪く、連日、国会やワイドショーを賑わす「大炎上」となりました。

「悪い」と批判しているにもかかわらず、筆者が事後的に「絶妙」と書きたくなった理由は、この問題が資産運用ビジネスにとって特大の「炎上マーケティング」として機能したからです。

実際、この問題のメディア露出を広告費に換算すると、天文学的な数字になっただろうと想像できます。

金融業界が何十年にもわたって「貯蓄から、投資へ」というキャンペーンを続けてもサッパリ動かなかった人々の多くが、老後の資金の問題に目覚めて、投資に関心を持つようになり、投資信託の積み立て投資口座を新規に開設するなどの動きを見せました。

「2000万円問題」とは何だったのか

ところで、「2000万円問題」は、何が本質的な問題点だったのかというと、個々人の事情によって異なる問題を「平均」で語ろうとしたことでした。正しくは、個々人が「自分の数字」で自分にとって必要な貯蓄額や将来の資産額を計算する「方法」を伝えるべきでした。平均では、役に立ちません。

少し考えると分かっていただけると思いますが、現役時代に高所得な人は現役時代の支出額も大きいでしょうし、老後の支出の必要額も大きいでしょう。彼らは、「2000万円で足りるわけがない」という不安を抱えます。

逆に、相対的に低所得な人は、現役時代の支出も小さいし、その分老後の必要額も小さいでしょう。彼らは、リタイアまでに2000万円の資金を作ることが難しいと感じています。そして、「2000万円も必要だなんて、これは大変だ」と不安になります。

つまり、「平均」の数字は、参考になるというよりも、多くの人を不安にさせます。個々の人が安心するためには、「自分の数字」による計算方法を知る必要があります。

しかし、お金に関する多くの記事や書籍では平均のデータで老後を語ろうとするものが多く、率直に言って役に立ちません。

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