山崎元が「未公開原稿」で伝えようとしていた「人生100年時代」の"まやかし"と「老後2000万円」問題の"本質"

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経済が「デジタル化」していることや、「グローバル化」していること、さらには働き方について「改革」が必要であることは、少なくとも過去20年くらいずっと言われ続けてきましたが、私の問題意識に関連するここ数年の変化を振り返ってみましょう。

まず、2016年に翻訳本が出版されて、2017年、2018年を通じたロングセラーになった『LIFE SHIFT』(リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著、池村千秋訳、東洋経済新報社)という書籍は、「人生100年時代」というフレーズと共に、日本人の人生設計の考え方や金融資産の運用に大きな影響を与えました。

同書は、先進諸国の平均寿命が延びていて、とりわけ長寿国である日本人は、人生が100年あるというくらいの前提で人生のプランを考える必要があることを指摘しました。

そして、「大学まで勉強して」、「就職して会社で働き」、「引退して老後を暮らす」といった3ステージ・モデルの人生設計では、長寿化時代にうまく適応できないと警告しました。

ここまでの指摘はおおむね正鵠を射ていたように思えます。あなたが会社員だったとして、定年が近づいてきた時点で「さて、定年後はどうしようか」と考えるのでは、多くの場合、全く遅いからです。その後の人生選択の幅が狭くなりますし、経済的にも、精神的にも、「人生がもったいない」。

ただ、筆者は、『LIFE SHIFT』が提示した人生設計の考え方が、いくつかの点で、少なくとも現在及び近未来の日本にあっては不適切だと考えています。私が考える方法論とは重要な点でいくつか異なります。しかし、同書の問題提起自体は大いに評価したいと思います。

金融ビジネスにとっての「人生100年時代」

ところで、『LIFE SHIFT』から生まれた「人生100年時代」という言葉は、金融業界が大いに気に入ることになりました。

もともと金融業界にとっては、老後のお金の必要性は、将来のインフレ・リスクへの対処の必要性と並んで、運用商品販売のための「2大商材」と言っていい大事なテーマです。

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