山崎元が「未公開原稿」で伝えようとしていた「人生100年時代」の"まやかし"と「老後2000万円」問題の"本質"

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彼らは、「老後にはお金が必要です。しかし、お金がないと寂しい老後になりますよ」と顧客に訴えて、金融商品を売りたい。顧客の心の中に「恐れ」の感情を喚起して商品へのニーズを煽るのはセールスの常道です。

ですが、老後の不安を長々と露骨に説明して顧客を脅すのはセールストークの構成が難しいし、金融マンもあまり気が進まない。しかし、「人生100年時代です」とひとこと言うと、キャッチーな言葉で、割合上品に「長い老後にあってお金が続くかどうかが心配ですね」と伝えることができます。

人生がかつてイメージされていたよりも長いことを意識することは重要ですが、「人生100年時代」を謳う運用商品(具体的には、外貨建ての生命保険、毎月あるいは奇数月分配型の投資信託、ラップ運用など)の広告やセールスは全て疑う方がいいと申し上げておきます。

端的に言って全て無視すればいいし、仮に現在持っている場合の正解は、ほとんどの場合、即刻解約です。

「つみたてNISA」が生まれた背景

さて、「人生100年時代」は老後の経済的な備えの重要性を想起させる言葉でしたが、2018年には、つみたてNISAという長期投資のための税制優遇の仕組みができました。この制度はなかなか優れています。

しかし、この制度ができた理由は、おそらく2014年に導入されたNISA(少額投資非課税制度)というもう少し柔軟性の高い制度が、金融機関の営業に悪用されて、制度導入の目的を果たせなかったことにあったと推測されます。

長期的な資産形成に適さない分配金の多い投資信託を売ったり、投資信託を頻繁に売り買いさせて手数料を稼いだり、対面営業の金融機関の多くが、端的に言って「行儀が悪すぎた」のです。

そうこうしているうちに、2019年になって、国民にお金の人生設計の問題を突きつける大問題が勃発します。

それは、平均的な家計では、公的年金だけでは老後の資金が約2000万円不足すると指摘した、金融庁主催の有識者会議が発表した報告書を巡って大騒ぎになった、いわゆる「2000万円問題」でした。

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