【どうやってホストは沼らせるのか?】「1時間おきに起床し、客にLINE返信」「3日で11人と花見」感情を殺して接客するホストたちの実情

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表層演技は、自分が本当に感じていることを他者に対して誤魔化しているが、自分自身は誤魔化していない。

対して深層演技は、他者を欺くのと同時に自分自身の感情もコントロールし、欺こうとすることである。

「客キモッ!」と思いながら「お兄さんに会えて嬉しい!」とニコニコする風俗嬢は表層演技で、「私はエッチが大好きな女の子で、本当の恋人のように相手を癒すの……」と自分をも騙して接客する風俗嬢は深層演技をしていると言える。

四六時中、自分自身を欺き続けるホストたち

またホックシールドは、この2つの演技が労働者に強いられることで、バーンアウト(燃え尽き症候群)などの問題が生じることを論じている。仕事で偽の感情を生み出すこと、そして自らその感情を生み出すために自分自身を欺くことを四六時中行なうとすると、かなりの労力が必要とされる。自分の感情のやり場を失うことにもなりかねない。

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「俺の中でホストとしてあるべき姿として『感情を殺す』ってのがあるんよ。たとえばさ、今日俺の親が死んで、すげぇ悲しいとするじゃん。でも、お金払って飲みに来てるお客様には関係ないじゃん。俺と楽しく飲むために来てるから。だから私情を殺すの。自分がどう思ってるかは関係ない。いつも冷水のシャワーを5分浴びて、ヘアメイクをして店に入るとスイッチが切り替わる。でもたまに地元の友達とか、ホスト以外の知り合いが店に来ると、うまく感情を殺せなくて自分でも『いまホストできてないなぁ』とか、そういう気持ちになるな」(30代ホスト・年間1億プレイヤー)

彼のように自分の感情を押し殺し、客の前であるべき姿を見せるのはまさしく「感情労働」であろう。しかし、ホストの感情労働はそれだけではない。客室乗務員はつねに笑顔で客に寄り添うべき、葬式では悲しそうにするべき、といった決まった「感情規則」が、ホストと客には存在しない。そのため、ホストはただ相手が求める感情を発露するだけではなく、相手の感情を揺さぶるべく自分の感情をもコントロールするのだ。

佐々木 チワワ ライター

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ささき ちわわ / Chiwawa Sasaki

ライター。2000年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。高校生の頃から歌舞伎町に足を運び、トー横キッズやホストなどの現場を取材し、「歌舞伎町の社会学」を研究。自身もホスト通いを重ね、消費者としても参与観察を続ける。著書に『「ぴえん」という病』(扶桑社新書)、『歌舞伎町モラトリアム』(KADOKAWA)、『ホスト!立ちんぼ!トー横! オーバードーズな人たち』(講談社)など。

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