【どうやってホストは沼らせるのか?】「1時間おきに起床し、客にLINE返信」「3日で11人と花見」感情を殺して接客するホストたちの実情

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しかし、ホストとして売れたからといって、一切の時間外労働をしなくていいわけではない。高額なシャンパンを入れてくれる客のために、店が休みの日でも予定を空け、自分にお金を出すために風俗をやっている客が気を病めば、「メンタルケア(通称メンケア)」を行なう。地方の風俗に出稼ぎに行く客をホストが東京駅まで送り迎えすることもある。

「つねにホストとして過ごしていないと売れないなって思って。一人で寝るときは1時間おきにアラームかけて、全員のLINEを返信して。午前中に家事とかは済ませて、食事はつねにお客さんと一緒。ウーバーイーツを頼むくらいなら女の子と食事して、また次の子とはシーシャに行って。女の子が『まだ一緒にいたいな……』って思うタイミングで切り上げて、来店につなげる。同伴して店で酒飲んで、アフターも女の子3人くらいハシゴ。家に帰って寝たいけど、女の子と添い寝するだけでも『お前には気を許してる』って感じになるので一緒に寝たりしてたなぁ。月1000万円を売り続けるための初速はこんな感じ。売れたらブランドがつくから多少楽になったかな。花見の季節とか、3日で11人と桜見たよ……」(20代ホスト・年間1億プレイヤー)

時間外労働を一切しないホストはゼロと言っても過言ではないだろう。たとえ同伴やアフターといった客と1対1の時間は使わないにしても、営業時間外にLINEを返し、電話をするといった労働は確実に行なわれている。前述のホストは、客に「気を許している」と演出するために、店の外で一緒に寝ていた。こうしたホストの労働は接客・サービス業の中でも「感情労働」に分類できる。

感情労働とは何か

感情労働とは、社会学者のA・R・ホックシールドが著書『管理される心:感情が商品になるとき』で提唱した概念である。人間はしばしば、葬式では悲しそうにするべきといったTPOに則った「感情規則」を使いながらコミュニケーションする。こうした「〜すべき」感情を商業的に使用するのが感情労働だ。ホックシールドは客室乗務員を事例として挙げていたが、社会学では主に医療・介護の現場の労働を分析するにあたり、感情労働概念が用いられてきた。

感情労働を遂行するためには、具体的に「表層演技」と「深層演技」という2種類の演技がなされるとされている。

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