TSMCのアメリカ増資は「最良の選択」になる理由 出資も課税もなし、技術流出はリスクだが最大の勝者に

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これは何を意味するのか。台湾企業は、長年にわたり蓄積してきた経営ノウハウ、精密な管理能力、さらには自動化とAIの新技術を活用し、利益率を維持しているということである。さらに重要なのは、利益率の変動ではなく、ビジネスチャンスを確実につかみ、市場を拡大できるかどうかである。

台湾企業は、AIと半導体のビジネスチャンスを逃さず、売上を大幅に伸ばし、市場の拡大に成功した。これは、2018年から現在までの7年間にわたり、米中の技術戦争と半導体戦争が続く中で、台湾のハイテク産業が示した現実の姿である。

◆ポイント2:アメリカに研究開発センターを設立すれば、台湾から技術がなくなるのか? →機能を分け、台湾と相互補完

次に、研究開発センターまで移転すれば、TSMCの核心技術がいよいよ台湾からなくなるのではないかについてである。

研究開発センターの調整には時間が必要であり、すぐに移転できるわけではない。短くても3から5年、長ければ10年かけて、アメリカの研究開発拠点が本格的に整備され、成果が表れることになる。

さらに、アメリカと台湾の研究開発の役割は、おそらく異なるものになるだろう。台湾の研究開発は、主に製造プロセスの技術向上や生産効率の改善に焦点を当てると予想される。

TSMCはアメリカで人材確保を強化

一方、アメリカの研究開発センターは、より先端的な技術の探求に注力することになる。例えば先端材料、シリコンフォトニクス、さらに進んだ製造プロセス技術、さらには量子コンピュータ関連技術など。これらがアメリカでの研究テーマとなる可能性が高い。

TSMCはグローバル企業として、グローバルな機会を最大限に活用しなければならない。とくに人材の確保は、今後の競争力の中核を担う最も重要な要素である。

アメリカでの人材確保を強化し、優秀な人材の研究開発への貢献を活用することで、台湾における人材や先端技術の不足を補うことができる。このような取り組みが、TSMCのグローバル戦略にとって大きなプラスとなるのである。

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