TSMCのアメリカ増資は「最良の選択」になる理由 出資も課税もなし、技術流出はリスクだが最大の勝者に
まず、多くの人が考えるのは、TSMCが6つの工場をすべて完成させた場合、将来的に利益率が低下するのではないか、という点である。
答えは「する」である。アメリカ工場の生産能力を増やせば、利益率は低下する。しかし、同時に売上高も増加し、TSMCはアメリカ市場で確固たる地位を築くことができる。サムスンやインテルといったライバルは、対抗することが極めて難しくなるだろう。
トランプ大統領が推進するアメリカ製造業回帰の最も大きな変化は、今後、製造業のビジネスにおいてコストや効率のみを考慮しなくなることである。政治が介入すれば、多くの状況で変化が生じる。
かつて、アメリカが製造業を復活させることは不可能と考えられていた。さらに言えば、同国の半導体製造が現在の世界市場における10%のシェアから20%に拡大することも不可能と見られていた。しかし、トランプ大統領が製造業回帰を推し進めれば、可能性は現実のものとなる。
アメリカ回帰は高コスト?
トランプ大統領は、企業の経営コストが上昇することや、製品価格が高くなることを気にしない。彼が考えるのは、市場を確保することであり、それを確実に実現することである。今後、このような考えが定着していけば、企業経営者もそれに適応する必要がある。
2週間前、台湾電機電子工業同業公会の理事長であり、インベンテックの前会長である李詩欽は、台湾のAIサーバー産業がアメリカテキサス州への投資を拡大する計画を発表した。5月には、大手企業が具体的な発表を行う予定である。製造業がアメリカへ移転する流れは、もはや止められないだろう。
現在、多くの人がアメリカへの投資に否定的なのは、コストが高すぎるからである。しかし、ここで重要な事実を見落としてはならない。それは、技術の進歩によりAIが製造コストを削減する可能性があるという点である。この変化は、多くの人の想像を超えるものになるだろう。
思い返してみてほしい。2018年、トランプ大統領が企業に中国からの撤退を求めた際、多くの電子産業の経営者は「不可能だ」と主張していた。
しかし、その後多くの企業が中国から撤退し、中国での生産比率を引き下げた。それでも利益は悪化せず、むしろ向上したのである。2024年には、台湾企業の多くが売上高と利益の新記録を樹立した。すでに発表された決算報告を見ても、クアンタ、ウィストロン、ウィイン、TSMCのいずれも過去最高の業績を達成している。
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