不二家「ミルキー味のドーナツ」一体なぜ生まれた ロングセラーを新業態に生まれ変わらせる戦略

✎ 1〜 ✎ 3 ✎ 4 ✎ 5 ✎ 6
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

協議したところ、「老若男女に愛されるソフトドーナツと、ソフトクリームを組み合わせたコンパクトな業態を作ればいいのでは」との意見が出て決まったそうだ。

加えて、長年親しまれるペコちゃんとミルキーに特化すれば、自然に注目が集まり、「なんかおいしそうだな」「ミルキー風味で不二家らしい」と感じてもらえるのでは……というアイデアも採用された。

海老名駅前のショッピングモール内フードコートにある、ペコちゃんmilkyドーナツ ビナウォーク海老名店(写真提供:不二家)

だが、それらはいずれも、すでに持っているリソースの組み合わせだ。ゼロから作ろうという意見はなかったのだろうか。不二家の洋菓子事業本部 店舗オペレーション部部長で、開発チームを率いる金田剛さんはこう語る。

「そういった声もありましたが、まったく新しいものを無から生み出すよりも、自社で持っているノウハウや技術を活かして新業態を開発するのがベストだと判断しました」

あえて競合は意識せず、業態を作り込んだ

ミスタードーナツやクリスピー・クリーム・ドーナツなどの競合を意識することもなく、「不二家のイメージ、土壌から新しいものを生み出し、新しいお客様を獲得していこう」がスローガンに掲げられたという。

不二家の洋菓子店店頭。ペコちゃんの店頭人形がトレードマークだ(写真提供:不二家)

正直なところ、フードコートにおけるドーナツ専門店は決して珍しくない。しかし不二家の戦略の妙は、この「ミルキー」という強力なブランド資産を全面的に活用した点にある。

単なる味の転用ではなく、消費者の記憶に根付いた情緒的価値を新たな形で提供する、「ブランド資産の再編集」をしたことにあるのではないだろうか。

競合との違いを明確にするために費用をかけて新しいものを作るよりも、自社にしかない資産を活かして差別化につなげたのだ。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事